書籍【メタバース革命~バーチャル経済圏のつくり方】読了
私自身は、決して「メタバース住人」ではない。むしろリアル世界の方が居心地が良いと思っている方だ。
それでも、「エンタメのほとんどがメタバースになる未来」については容易に想像がつく。
むしろ、そんな世界が訪れることを、信じて疑っていないと言ってもいい。
だからこそ、興味を持ってメタバース関連の書籍を読む訳であるが、自分でも「矛盾しているなぁ」という自覚はある。
とっととメタバースの世界を体験して、どっぷりその世界に漬かった方が話は早いと思うが、そこまでの勇気はないという感じだ。
(ちょこっとの体験程度は行っているのだが、どっぷりまでには、なかなか至らない)
この辺りは昭和世代の限界かも。
どうにも感覚的に、バーチャル世界だけで日常を過ごす気持ちが湧いてこないのだが、息子世代がリアルと区別なくバーチャル世界を行き来しているのを見ていると、もはや「世界はバーチャルになっていくのは間違いない」と現実に想像できてしまうのだ。
(言葉遊びっぽくなってしまった)
そこは、「単なる仮想の空間」とは言えないくらい発展していくのは間違いない。
その世界に接続している人が増えれば増えるほど、単純に経済的な価値は生まれてくる。
何らかの物を売買する人が出てくるだろうし、多人数がいるのであれば広告的な価値も生まれてくる。
バーチャル世界は場所を瞬時に移動できるし、空間を無限に広げることができるのだから、「土地」の概念が不要なはずなのに、実際にバーチャル世界の土地が売買されていたりする。
リアルの土地であれば、駅から近いなど、生活の便利さによって価値が上下したりする。
バーチャル世界の土地も考え方は同じで、買う側が価値を認めるような便利さや優位さを提供できるかで、ほぼコストがかかっていないものを、価値あるものとして提供が可能となってしまうのだ。
これは、リアル世界だけで生きている人には、なかなか理解が難しい部分だと思う。
しかし実際には、エンタメの世界は特に、リアル世界での活動もバーチャル感覚のようなものだから、そこに慣れている人はメタバースだろうがVRだろうが、活動場所が変わっても違和感はないのかもしれない。
ユーチューバーだって、投げ銭を収入源としているライバーだって、所詮画面の中での世界と考えたら、それはバーチャルなものと大きく変わりはない。
Youtube画面や、SHOWROOMの画面が、360度VRの世界に置き換わるだけだと思えば、そこに違和感は感じないはずだ。
日常の生活でも、テレワークがかなり浸透しているが、一日中PCの前に座って、オンライン会議をこなしているのであれば、それがすべてVRに置き換わっても十分に対応できそうだ。
むしろ平面の画面だけでオンライン会議をするよりも、VRの方が「相手の雰囲気」も感じやすくなって、便利になるのかもしれない。
そんなことを想像するだけで、むしろバーチャル化、VR化が進んでいくのは、間違いないと感じてしまう。
著者が主催している、メタバース上の大規模イベント「バーチャルマーケット」(Vket)は、会場内でアバター用の3Dアイテムやデジタル商品だけに留まらず、リアル商品である洋服や飲食物も売買がされているというものだ。
2018年から開催しており、世界中から約130万人以上が、オンラインのこの場に訪れている。
このイベントの会場の中で「食べたいな」と思った食べ物が、実際に自宅に届くとなったら、どんな未来世界なんだと思ってしまう。(そう思ってしまうのが昭和の感覚だ)
理想を言えば、タイムラグが全くなく、バーチャルイベント会場のカフェエリアで頼んだものが、即自宅に届くことを望んでしまうが、そんな世界が現実になることだって不可能な話ではない。
少なくとも過去の常識に囚われていたら、新しい世界に対応はできない。
新世界に対して、どうやって我々側が対応していくか。
そこは参加する側としての対応もあるが、その経済圏でどうやってビジネスを構築していくかの発想も非常に重要だ。
リアル世界では体験できないものが、バーチャル世界にはある。
リアルの置き換えではなく、全く新しい発想のものを、バーチャル世界で生み出すことが出来たら、それは今までにない付加価値を提供したことになる。
冒頭でも記載したが、エンタメの世界は益々バーチャル化が進んでいくだろうと思っている。
もちろん、今までのゲームのように、バーチャル世界だけで閉じたものも多いと思うが、実際には「今までリアルだったものが、バーチャルへ沁み出す」という現象が増えていくような気がする。
それはエンタメコンテンツを提供する側の、我々の課題でもあるが、まだまだバーチャル世界のことを正確に理解しているとは言い難い。
「リアル演劇の公演を、配信チケットでも売りましょう」というだけでも、ハードルが高かった世界だ。
コロナ禍を得て、これらがようやく一般化してきたが、まだまだ「配信チケットでも」という部分で、付加価値を提供できているとは言えない。
全体収益を考えると、撮影のコストをかけられない訳だから当然だが、リアル公演を撮影し、そのまま垂れ流しで配信するのが精一杯なものも多い。
しかも、これだけコンテンツが溢れている時代に、わざわざそのコンテンツ(公演)を選んで観たいと言ってくれる人がどれだけいるのか。
そこまで熱いファンであれば、そもそもリアル公演に足を運んでくれる訳で、配信コンテンツを購入してくれる方は、どういう心境でアクセスしてくれているのか。
もちろん、何らかの事情で会場まで足を運べない方も多いだろうとは思うが、それだけではないはずだ。
いずれにしても収益性を勘案しながら、全体のビジネスを組み立てるのは、なかなか難しい作業だ。
バーチャル世界は無限に情報が溢れている訳で、今すでにインターネット上にあるあらゆる動画を、一生かかっても視聴することは不可能な状況だ。
(一日にUPされる動画だけでも、きっと一生かかっても見られない量のはずだ)
自分では選びきれない数々のコンテンツは、今でもレコメンドの形でお薦めされてくる。
これが更にバーチャル世界の住人となれば、あらゆる行動履歴はそれこそデータとして溜まっていくはずなので、アルゴリズムによる周到な計算で、偶然を装ったかのように、「出会い」を演出してくれるだろう。
これは当然「人と人との出会い」でもそうなっていくと想像できる。
そんな世界がユートピアなのかディストピアなのか、私には想像がつかないが、世界がそういう方向に行くことは間違いないと思っている。
私自身がバーチャル世界にどっぷり浸かることは無さそうであるが、冷静になってこの状況を、外側から見ていきたいと思っている。
世界がどう変化していくのか。
その時に自分はどう行動していくのか。
年齢を考えると、変化に対応するのが難しくなっていくのかもしれないが、そこは好奇心を失わずにやっていきたいと思っている。
いずれにしても、すごい未来の世界に来たものだと思う。
未知の領域を楽しんで、自分の居場所も見つけていきたいと考えている。
(2025/5/3土)