書籍【戦略の創造学~ドラッカーで気づき、デザイン思考で創造し、ポーターで戦略を実行する】読了
私自身、社会人になってかれこれ20年以上様々なビジネス書を読み続けている。(単なる趣味なだけ)
本書は、過去の経営学などで出てきた話の総合版のような位置づけだ。
この手の包括的な内容のものは、大抵中身が薄くなるものだが、本書の内容は濃かった。(と私には感じた)
当然私は経営学を本格的に勉強した訳ではないし、本書で挙げられた、シュンペーター、ドラッカー、マイケルポーター、デザイン思考、競争戦略、その他諸々を扱った書籍を隅から隅まで熟読した訳ではない。(ただし一通りは読んでいる)
勿論翻訳本(日本語)のため、原書を読んだ訳ではない。
日本語で読んでも、正直内容は難しく、意味を完璧に理解したとは言い難い状態だ。
しかし、本書を読んで腹落ち感がある。
一つのお題について深堀していくよりも、より実践的に考えてみたところに共感できたのかもしれない。
確かにデザイン思考を活用して、課題の本質を探るところから入るのは正しそうだ。
その課題を解決するためには、既存の技術なりサービスなりビジネスモデルを、新結合させる。これが、シュンペーターが語る、イノベーションだ。
そしてそのイノベーションから、ポーターの戦略論を使って攻め方を構築し、実行段階ではドラッカーのマネジメントを活かしてコントロールするという感じか。
本書のような「良いところ取り」は、実はありそうでなかった発想だと思う。
数々の名著をつまみ食いしたような感覚だが、一連のビジネスの流れで考えてみると、実に理に適ったやり方だと感じてしまう。
例え良いアイディアが浮かんだとしても、そこからビジネスを立ち上げて、さらに実行段階まで持っていくのは非常に難しい。
もし最新の素晴らしい技術を発明したとしても、それをどうやって活かせばよいのか。
ほんのちょっと既存技術と組み合わせてみたり、全く異なるジャンルのものと結合させてみたりすればいい。
そんな試行錯誤について、「イノベーションとは新結合である」という認識すら無ければ、そもそも実行されないだろう。
日本企業の過去の成功体験が、こういう点でもマイナスに働いてしまうと感じることがある。
枯れた技術であっても、今までのやり方だけに固執するのではなく、発想を変えて、ドンドン協業していけば、新たなイノベーションが生まれる気がするのだ。
そういう点でも、まずは意識から変革していくことが大切なのだろうと思う。
本書内では地政学の変化や、社会での認識の変化についても語られている。
地政学で言えば、これからはアジア・アフリカの時代という状況において、日本はどういうポジションを狙っていくのか。
これこそ国家戦略レベルの話であるが、イチ企業であってもサイズは異なるとは言え、考えていく必要性を感じている。
落ちぶれつつあるとは言え、まだ自分たちに残っている優位性を活かして、どういう戦略で攻めていくのか。
時代の変化、社会の変化で言えば、経済第一主義から、ESG・SDGsの流れなどが顕著かと思う。
今のZ世代は、昭和を生きた我々とは価値観が全く異なっている。
これは日本だけでなく、世界で見ても流れは同じであると思う。
特に東南アジア地域は、国によるとはいえ、ボリュームゾーンの年齢が若い傾向にある。
例えばフィリピンの平均年齢は、24〜25歳と言われているから、日本の平均年齢48〜49歳の約半分ということになる。
ここまで来ると、文化の違いだけでは片付けられない発想の違いを認識すべきだ。
これから益々グローバル化が進み、そういう意味でも地政学の考え方は、地図が塗り替わっていくと考えられる。
これからの未来を担う世界の若者たちは、一体何を求めているのか。
過去、日本企業は数々の優れた製品を生み出してきたが、今後これからの製品・サービスはすべてにおいて「意味」が問われてしまっている。
「なぜ、その製品・サービスが必要なのか」
企業がパーパス・ビジョンを掲げることと連動するが、今は「単なる優れた製品」というだけでは、なかなか購入に繋がらない。
単なる優れた製品であっても、他にもっと優れた製品が出てくれば、その瞬間に「相対的に優れれていない製品」の位置に追いやられてしまうからだ。
その後は価格競争に巻き込まれてしまい、薄利もしくは利益を度外視しても、在庫を売りさばくという消耗戦に巻き込まれるという、悪循環になってしまう。
どうやって戦わずして勝つか。
それこそが、「戦略の根幹」であることは間違いない。
企業が世界観(ビジョン)を示して、それに共感する応援者(サポーター)をどうやって創り上げていくかが、今後の企業に必要とされる能力だろうと思う。
「未来を予測するのではなく、顧客とともに創造していく」
経営者自身が意識を変えていく必要性を感じるが、そんな簡単な話ではない。
年齢が高い人ほど、利益至上主義という意識に凝り固まっている気がする。
もちろんノルマ達成は必要だし、そもそも利益が出なければ、ESGもSDGsも言ってられないのが現実だ。
だからこそこれからの経営の舵取りは、本当に複雑で難しいと感じている。
例えばこれからの未来は、経済的発展を遂げながらも、同時に脱炭素も実現しなければならない。
一つのことを深く学ぶことも重要だが、こうして「良いところ取り」を行うためには、それぞれの理論の使える部分をあぶり出し、まずはライトに実践して、試行錯誤を繰り返す姿勢が大事なのではないだろうか。
複雑な組み合わせであっても、小さくスタートすれば、軌道修正もやりやすい。
本書内で取り上げた、新結合、マネジメント、ブルーオーシャン戦略、デザイン思考、競争戦略は、まさに教科書。
基本に忠実に、教科書通りに実行してみるのは良いかもしれない。
ついつい日々の業務に忙殺されてしまうが、こうして立ち止まって考えることが大切だ。
少しずつでも小さく実行してみたいと思っている。
(2025/4/15火)