期待していなかった多言語対応が、470万人規模の認知につながった話
はじめまして。坂尻智義と申します。
私は新規事業「かんおけin」の立ち上げ支援に携わり、Web施策と集客を担当してきました。かんおけinは、東京・高田馬場で本物の棺桶に入って30分間瞑想できる施設です。
この事業の認知を広げるために行った施策の中で、正直なところ、期待値が高くなかったものがあります。公式サイトの多言語対応です。
ところがこの多言語対応が、めぐりめぐって470万人規模の認知拡大につながる転機になりました。この記事では、その経緯と、そこから学んだことを書きます。
目次
なぜ、期待していない施策をやったのか
海外のYouTuberから、突然の問い合わせ
AI時代に、可能性のある接点を増やすという選択肢
なぜ、期待していない施策をやったのか
かんおけinの支援でオーナーから受けた依頼は、「とにかく事業の認知を増やしてほしい」というものでした。
ただ、新規事業には判断材料になるデータがほとんどありません。SEOが効くのか、記事が読まれるのか、そもそも誰がこの施設に興味を持つのか。やってみるまで分からないことだらけでした。
そこで私が取った方針は、「どの施策が当たるかは事前に予測できない。だから、可能性があることはできる限りやる」というものです。
とはいえ、施策を増やせば、調査、実装、運用の負担も増えます。少人数の体制でそれを成立させるために、AIを積極的に活用しました。AIに成功する施策を選んでもらうのではなく、一つひとつの施策にかかる手間を減らし、実行できる手数を増やすための活用です。
デザイナーの案に沿った公式サイトのリニューアル実装、SEO最適化、オウンドメディアの立ち上げ。そうした施策の一つとして、多言語対応にも取り組みました。
多言語対応への期待値は、高くありませんでした。周囲のサイトを見ても、意外と積極的に取り組まれていない施策です。それでも、まったく期待していなかったわけではありません。「可能性があるなら、やれるだけやる」という方針に沿って、オーナーと合意のうえで実施しました。
海外のYouTuberから、突然の問い合わせ
多言語対応からしばらく経ったある日、そのサイトを海外のYouTuberが偶然見つけてくださいました。そして、ご本人から直接お問い合わせが届いたのです。
こちらから動画掲載を依頼したわけでも、多言語化の時点でバズを狙っていたわけでもありません。外国語で読めるサイトを用意していたことが、海外との思いがけない接点になりました。
やり取りを重ねた後、実際に来店して体験していただきました。その様子を紹介したYouTubeショートは470万回再生され、多言語サイトをきっかけに生まれた一つの接点が、想像以上に多くの方へ事業を知っていただく機会につながりました。
期待値が低いと見ていた施策が、一番大きな成果のきっかけになったのです。
その後、かんおけinは香港のテレビ番組、新聞、雑誌、Webメディアなど、国内外のさまざまな媒体でも紹介していただけるようになりました。もちろん、これらは私一人の力ではありません。事業を運営するオーナー、紹介してくださったYouTuberの方、取材・掲載に関わってくださった皆様のお力添えがあってこその結果です。
AI時代に、可能性のある接点を増やすという選択肢
この経験を通じて、AIの活用が身近になった今は、どの施策が当たるかという事前予測だけを重視するのではなく、可能性のある接点を実行可能な形で増やしておくことも、新規事業における選択肢の一つだと感じました。
もし「多言語対応は期待値が低いからやらない」と判断していたら、この接点は生まれませんでした。逆に、多言語対応だけをやっていれば自動的に成果が出たわけでもありません。数多くの施策を積み重ねた中の一つが、偶然も味方につけて花開いた、というのが正確なところだと思います。
そして、その「数多くの施策」を少人数で実行できたのは、AIを活用したからです。今回の取り組みにおいて、AIは正解を教えてくれる道具ではなく、一つひとつの負担を抑え、試せる手数を増やすための道具でした。
事前の見極めを大切にしながら、限られた体制でもAIを活用して実行の負担を抑え、可能性のある接点を少しずつ形にしていく。私はこれからも、事業の状況に応じて、こうした進め方も選べるエンジニアでありたいと思っています。