こんにちは!林田二郎です。
朝起きてから夜眠るまで、私たちは一日に何度もスマートフォンの画面を指先で叩いたり、なぞったりしています。その動作の一つひとつは、あまりにも日常的で、ほとんど無意識のうちに行われています。しかし、その指先が触れているガラス板の向こう側には、無数の選択肢と、それを整理した人間の意図がぎっしりと詰まっています。
私はウェブデザイナーとして、この画面の裏側にある仕組みを日々組み立てています。私の仕事は、単に綺麗な絵を描くことではありません。
世の中にある多くのウェブサイトは、情報を伝えるための道具として作られています。しかし、優れた道具が持つ共通の要素とは何でしょうか。それは、使っているときに道具そのものの存在を忘れてしまうほど、手に馴染むということです。ウェブサイトも同じで、本当に優れたサイトは、操作しているときにデザインの存在を感じさせません。
私がデザインを行うときに最も大切にしているのは、まだ見ぬ誰かの心の動きを、徹底的に想像することです。
新しいサービスを立ち上げたばかりの経営者が、どんな熱い思いを世界に届けたいのか。そして、そのサイトを訪れた人が、どんな不安や期待を抱きながら画面を眺めているのか。その両者の思いが交差する場所が、ウェブサイトという空間です。だからこそ、ただ見た目が良いだけのサイトでは、その懸け橋になることはできません。
たとえば、あるボタンの色を少し明るくしたり、文字と文字の間の隙間をほんの数ミリだけ広げたりする作業があります。これは一見すると地味な作業ですが、ユーザーの視線の流れをスムーズにし、迷いを消し去るための重要な設計です。
映画の監督が、観客の感情を揺さぶるためにカメラの角度や音楽のタイミングを計算するように、私も画面の要素を一つずつ配置していきます。ここで視線を止めてもらい、ここで一呼吸置いてもらう。そんなふうに、目に見えないリズムを画面の中に刻み込んでいくのです。その結果として、訪れた人が迷うことなく目的地にたどり着けたとき、初めてデザインは機能したと言えます。
十年という月日をこの世界で過ごしてきましたが、技術がどれほど進化しても、変わらない本質がここにあります。それは、ものづくりの根底には常に人がいるということです。
デジタルな空間だからこそ、そこに通う温もりや、作り手の細やかな配慮が、訪れる人の体験をより豊かなものに変えていきます。誰もが当たり前に通り過ぎてしまうような画面の端々にまで、想像力を巡らせること。目には見えないけれど、触れた瞬間に心地よいと感じられる空間を、これからもデジタルの世界に静かに生み出し続けていきたいと考えています。