「放置していたGameJam作品が、一人の提案からオフライン展示へ。創作の熱意を形にするまで」
1. 始まりは、たった72時間の挑戦から
大学2年生に参加したGameJamで、何の賞も得られず、イベント終了後はGitのレポジトリに眠ったままになっていた作品「逃声」。声を発すると音波が一時的に地形を照らし、プレイヤーが声を出しながら道を探し、危険な存在から逃げ、牢獄から脱出するゲームです。
(当時の画像。48時間をシェーダーの制作に費やし、プレイヤーの足音(白波)や、ゾンビの肉を貪る音(赤波)が、伝わった場所を暫くプレイヤーの視界に映すシステムを作った。)
SteamのPCゲーム「Stifled」という作品の参考でありながら、同ゲームが持つ奥行きのあるストーリーや、主人公の精神世界を良く反映した不気味なステージの制作は自分には困難だったため、「そのゲームの骨組みだけを真似た」という技術的な部分でこの作品は止まってしまい、それ以降作り続けるアイデアや意欲が湧きませんでした。
それから6年。別のGameJamで知り合ったインディーゲームに詳しい知人と、「リリースまでしっかり完成出来るインディーゲームを一つ作ろう」と議論していた時、この作品を知ると、「いや、ゼロからじゃなく、この旧作を一度リメイクしてみないか?」という提案を受けました。
2. 「骨組み」から「肉付け」へ
「このゲームには大きな未来がある。」
そう興奮して当時のデモを遊ぶ彼の言葉に背中を押され、プロジェクトを再始動させることに。彼はこのゲームの遊び方を、スカベンジャー(ステージから価値のあるものを集めて脱出する)へと進化させることを提案し、それによってかつて「欲しいけど難しくて無理…」と思っていたストーリーの比重をカットし、「このビジュアルを最大限に活かせる、新しいステージとスカベンジャーのひな形の完成」を最優先目標としました。さらに、Unity未経験でありながら、自分から進んでステージ制作を始め、このゲームの宣伝活動まで手伝ってくれました。 どんどんシステムの完成度やステージが増えていくことに充実感を感じましたが、彼がこのゲームにどんな魅力を感じ、なぜ大きな自信を持っていたのか分からなかった部分があり、その一方で彼の直感を信じ、当時即席で作っただけのビジュアルやシステムのディティールの改善に全力を尽くしました。
(画面は彼が完成させたステージの一つ。また、このバージョンのビジュアルは前と比べて細かいディティール(テクスチャにあるNormalMapの凹凸)を描写するようにし、遠くの物体は太さ均一でスムーズだった線をノイズ混じりの特殊なぼかし表現に変更した。敵がはっきりとしない輪郭を持つ方がホラーゲームらしいと考えた(EpicのPCゲーム「Saturnalia」に影響を受けている))
3. オフライン展示での「答え合わせ」
迎えた当日。インディーゲームのオフライン交流会で、私たちのブースには絶え間なく人が訪れてくれました。 「これ何のゲーム?」と真っ暗な画面を覗きにきてくれた人に対し、「Hey!」と我々がマイクに向かって叫ぶと、途端に音の波が広がっていき、ステージが明らかになるのを見て、「おお!」という一声を頂き、一瞬でどんなものか理解されました。「これがこのゲームの強みである」ことを、その日初めて実感しました。ゲームの特徴が遊びこまずとも、ビジュアルから理解できる。そのアドバンテージをなぜ理解出来ていなかったんだろうと、昔の自分を惜しく思いました。それはインディーゲームにとって、「人に見てもらう」という最初の関門を叩く武器になるのだと今は理解しています。「Stifled」のビジュアルやシステムに、過去の自分は技術的な興味しかなく、それのどの部分がゲームとしての真価を発揮していたか、その分析が出来ずにいました。
(展示会にて。後ろで他の人のプレイを見に立ち止まる人も)
(別会場にて、来場者がまんべんなく貼って頂いたいいねシールと、グラフィックいいねシール。チームメンバーがそれぞれ中国の離れた省に住んでいるため、殆どの会場は彼が単独で出展を請け負っていたが、こうして写真をグループチャットに挙げて喜びと熱意を分かち合った。)
4. 「肉付け」ができる自分へ
私はこれまで、「この仕組みは面白い」という技術的な手応え(骨組み)をゴールにしてきました。しかし、今回のプロジェクトと展示会での経験を経て、それはゲームの完成の観点から言えばまだスタート地点に過ぎないのだと痛感しました。
彼が持っている、骨組みを見て「どんな肉付けが最適か」を判断する力。それは今は手元にない完成作を見てプレイヤーが何を感じ、どこで驚くのかを想像し続ける、これは「経験の蓄積」からしか得られないものだと思います。
まだそれを達成するには、私には圧倒的な試行錯誤の数が足りていないと感じました。
幸いにも、私にはこの「逃声」(今では、Abssal Echo)という実験場と、客観的な視点をくれるパートナーがいます。なぜその判断が出来るのか、今後の交流で理解を深めるチャンスがあります。
そして、大学院を卒業した今、より多くの人と会うことを考えるべきです。GameJamも良い機会ですが、プロのクリエイターと話をする機会も追い求めないといけないと思っています。自分の足りないところを見つけ、最後は、自分も肉付けが出来るインディーゲームクリエイターとなりたいです。
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