STEAM教育のリアルVol.2:高度な教材でも発生する油断と慢心。「子供を相手にする」という事
目次
どこまで行っても「子供の相手」が本質である
研修やマニュアルは「子供の接し方」を重点にするべき
故きを温ねて新しきを知る
私はこの10年で、多くのプログラミング教材に触れてきた。
はじめの頃はpdfのテキストを印刷、またはタブレットで表示したシンプルなものだった。
だが現在は、音声やアニメーションでの解説を取り入れたものも多く、説明も細やかでテキストの質は上がってきていると感じる。
当然、今後もAIの導入なども活発になり進化を続けていくだろう。
こういった教材やカリキュラムの進化、子供のプログラミング学習はスムーズになり、運営や講師の手間は減ってゆくだろうか。
私は、そう甘くはないと考えている。
どこまで行っても「子供の相手」が本質である
子供向けプログラミングスクールは、「大学入試に追加された情報Ⅰを見据えて」や「デジタル社会を生き残る為に」など先端のスクールである事をアピールする事が多い。
上記の「教材」についても、土台がデジタルに寄っている事もあってか他の習い事(学習塾やそろばん塾など)に比べて進化が目まぐるしいと感じる。
だがいくら先進的であろうと、子供向けの習い事である以上は「子供の相手」は避けて通れない。
手を焼く子供のケースを挙げればキリがないが、経験してきた生徒の中から分かりやすい例を幾つかピックアップすると……
・油断や慢心で説明を聞かない、読まない子。
・かんしゃく持ちですぐ怒る子。
・騒いだりすぐ出歩く子。
・あの手この手でズルをしようとする子。
・マウスやキーボード、タブレットの操作もおぼつかない低学年の子。
・内気で自発的な質問が出来ない子。
・部活や塾でおやすみ・振替の相談が多発する子。
・目を離すとサボろうとする子。
・課題とは無関係かつ勉強にならないプログラミングだけをやりたがる子。
・スポーツの習い事の後にレッスンに参加し、疲れて寝てしまう子。
などなど。
こういった手のかかる生徒が1クラスに1人2人いれば、どんな先端技術のデジタル教材を使おうが現場は「子供の相手」で手一杯となる。
小さいことであろうと問題が起これば保護者の方との相談や連絡でも時間が取られる。
こういった現場の負担は「昔ながらの習い事」と何一つ違いはない。
経営層の中には、教材だけでのケアは難しくとも「ルール付けやマニュアル化で何とか出来るのでは」と考える人もいるかもしれない。
だが、そんな「魔法のような解決方法」があるのならばまずは学校や学習塾で採用すべきであろう。
そもそも子供は言うまでもなく精神的に未熟であり、社会通念や物事の道理も学習中の段階だ。性格も千差万別なら、何かしらの特性、不登校などの問題を抱えているケースもある。
やはり、一人ひとりじっくりと向き合うしかないのだ。
研修やマニュアルは「子供の接し方」を重点にするべき
派手なエンタメ性や、動画やAIを駆使した最先端のデジタル教材がいけないワケではない。
だが、それはあくまで「課題に向き合いやすくなる・スムーズに進めやすくなる」という潤滑剤にすぎない。
そして、そこでフォローが難しい「子供一人一人と向き合う」という部分こそが講師にとって重要であると言えるだろう。
そして、スクールでの講師採用の際に一番大変だったのもこの点だ。
プログラミングスクールの講師募集をした際、応募してくる方は「セミリタイヤしたエンジニア」や「情報系の大学生」が多かった。
あくまで私が見てきた中での話ではあるが、こういった方は「子供の相手が得意ではない」というケースが多かった。
もちろん、応募してきた時点で子供が苦手という人はいない。
だが、たとえば「注意」「叱る」が出来なかったり、逆に苛烈すぎたり。
説明が苦手でただ答えを提示するだけだったり、子供への受け答えが堅いため打ち解けられなかったり等々。
そして一般的にフランチャイズ本部のマニュアルや研修は「課題と進行について」に終始するため、研修を受けてもなおこれらの問題は一切改善しなかった。
故きを温ねて新しきを知る
正直これは、プログラミングスクール特有……まではいかないが、スクール業界の中でも顕著であると考えている。
理由は、新しさゆえの歴史の浅さだ。
学習塾やそろばん塾、スポーツスクールなどに比べてプログラミングスクールはここ10年ほどで急進した習い事だ。
よって、個々の企業はおろか業界全体の中でも知見やセオリーが未成熟であると考えている。
冒頭で挙げた教材の件といい、ITに関わる状況は変化がめざましい事も、知見の蓄積のしづらさに拍車をかけている印象がある。
この点において、先進的な習い事という要素がかえって枷になっていると言って差し支えないだろう。
子供の対応という共通点においては、そろばん塾やスポーツスクールの例を参考に出来る事も多いかもしれない。
いずれにしても大切なのは「最先端の特別な習い事だから、デジタルやAIなどの工夫で大幅な効率化が出来る」という幻想を持たない事。
厳密に言えば、デジタルやAIで効率化が困難な「子供の対応」が事業の軸になっているという認識をする事だろう。
次回、STEAM教育のリアルVol.3:プログラミングを理解してもITに弱いエンジニアの卵たち