窓から差し込むやわらかな光の中でひとりの作業者が大切そうに小さな器具を抱えています。
組織全体の方向性を示す仕事と現場で一人ひとりの想いに寄り添う仕事の両方を重ねていく中で私の頭の中にはいつも無数の可能性が眠る大きな農園が広がっています。
その作業者が両手で握りしめているのは水を入れる金属の入れ物ではなく人々の胸の奥に隠された情熱の芽を優しく解き放つ不思議なジョウロでした。
個人の強みを引き出してチームの力へと繋げる作業や組織の進むべき未来を整える工程も実はこの特別な器具で温かな栄養を注ぎ込む作業によく似ていると感じる時があります。
世の中には素早く形を作るための厳しいルールや効率だけを求めた枠組みがあふれていますが外側から押し付けるだけでは本当に強い組織や魅力的な価値を生み出すことはできません。
どれほど綺麗に整えられた計画であってもそこに働く人々の自主性や内に秘めた想いが伴っていなければ環境が変わった瞬間に崩れてしまうのです。
そこで必要になるのが無理に芽を引っ張るのではなく土の下で眠る声に耳を澄ませて焦らずに温かな光と水分を注ぎ届ける丁寧な時間です。
表面的な出来栄えだけに一喜一憂するのではなく個々人が持つ本来の強みや密かな挑戦への意欲にじっと意識を向けること。
ジョウロの先から注がれた透明なひとしずくが固かった土へじんわりと染み込んでいった瞬間閉じ込められていた情熱が芽となって地上へ力強く顔を出し始めます。
その新緑の芽が生き生きと葉を広げていく姿を見つめた人々は自分たちの可能性を確信し同じ目的に向かって自発的に足を踏み出す勇気を得ていきます。
仲間とともに進む組織を作ることも単に指示を与えるのではなくそれぞれが自分の意志で花を咲かせられるような土壌と温かい空気を用意することが大切なのだと気づかされます。
私たちは毎日さまざまな想いや挑戦という種を抱えながら自分たちの農園を愛おしく耕し続けています。
日が落ちてオフィスを穏やかな影が包み込み窓の外に優しい灯りが点滅し始める時間になるとふと自分が注ぎ込んできた温もりのゆくえを確かめたくなります。
今日あなたが静かに注ぎ込んだ温かなメッセージはどんな力強い芽となって誰かの明日を動かしているでしょうか。
作業者は満足そうに息を吐き出しジョウロをそっと棚へと戻しました。
明日もまた誰も気づかない新しい才能の芽を探してじっくりと観察を続けていくのでしょう。