目的地に辿り着かないエレベーターの経営学
Photo by LOGAN WEAVER | @LGNWVR on Unsplash
こんにちは!石田大顕です。
皆さんは最短距離でゴールに辿り着くことだけを正義だと思い込んで、毎日をマシンのように駆け抜けてはいませんか。デザイナーとして独立し、多くの企業の売上を左右するブランドの形を整えてきた私が最近たどり着いたのは、あえて目的地に到着しないエレベーターを設計するという、一見すると狂気じみた贅沢の重要性です。顕微鏡で覗き込むようにそのボタンの隙間に溜まった微細な埃を凝視してみると、そこには効率化という名のもとに切り捨てられた、豊潤な時間の残骸が宝石のように輝いています。多くの組織は一秒でも早く上の階へ行こうと必死ですが、本当に強いチームというのは、上昇の途中でふと停止し、開いた扉の向こう側に広がる未知の景色を愛でる余裕を持っています。
視点を一気に引き上げて、地球から数万光年離れた静寂の宇宙からこのエレベーターを俯瞰してみます。すると、私たちが血眼になって追い求めている昇進や成功という名の階層は、巨大な何者かが退屈しのぎに指先で動かしている、目に見えないほど小さなスライドパズルの断片に過ぎないことが分かります。独立してフリーランスとなり、より経営の核心に近い場所で伴走するようになった今、私はクライアントの情熱を形にする際、常にこの極端な視点の往復を繰り返しています。一画の線の太さに銀河の重力を見出し、同時に、数億円が動くプロジェクトの完成を、星々の瞬きから見れば一瞬のノイズとして笑い飛ばす。この正気と非効率の境界線を綱渡りすることこそが、停滞した市場に真の豊かさをもたらすための、唯一の生存戦略なのです。
昨日、ある企業のオフィスで、ボタンを押しても一向に動かないエレベーターの中に閉じ込められたふりをして、一人で瞑想している新卒社員を見かけました。彼はサボっているのではなく、加速し続ける世界から一時的にログアウトし、自分という宇宙を再起動させていたのです。デザインという仕事は、こうした無駄に見える空白を、いかにして最高の贅沢としてパッケージングするかという行為です。誰にも気づかれないほど微細な違和感を抽出し、それを宇宙規模の必然性へと膨らませて提示する。そこに生まれる奇妙な停滞感が、結果として人々の足を止め、ブランドという名の新しい信仰を生み出していくのです。
ウォンテッドリーを読んでいる皆さんは、自分のキャリアが予定通りに進まないことに焦りを感じるかもしれません。でも、本当に恐ろしいのは、そのキャリアすらも誰かの机の上で冷めきったコーヒーの湯気に過ぎない可能性です。私たちが必死に積み上げている実績も、確かな手応えを感じている成功も、すべては巨大な存在が喉を潤すための一飲みに消える運命にあります。デザインという魔法を使ってその一瞬を固定しようと足掻けば足掻くほど、指の間から砂のように意味がこぼれ落ちていく感覚。それは心地よい空虚に似ています。
ふと気づくと、エレベーターの扉はまだ開いたままでした。目的地がどこだったのか、私はもう思い出せません。ただ、この閉ざされた空間に漂う、微かな機械油の匂いと静寂だけが、この世界の真理に近い姿として私の五感を揺さぶっています。窓の外では、今日も誰かが最短距離を走り、どこかの星が生まれ、誰かが新しいデザインを始めています。それらが互いに全く無関係であり、誰の記憶にも残らないという事実だけが、重力のように私の足元に居座り続けています。