「過激なシーンなし」で読まれる恋愛小説を書いて学んだこと
フリーランスシナリオライターの永久保セツナです。
2026年5月23日に、エブリスタのコンテスト向けに小説を投稿しました。
再会した冷徹上司は、私にだけ過保護です
大人の女性を読者層とした、冷徹上司×明るい新人(高校時代の先輩後輩)のオフィスラブです。
投稿翌日には閲覧数1000を突破し、ランキング入りも経験しました。
ここ最近の閲覧数を見比べていて改めて感じたのですが、私はどうやら「女性向け恋愛」「オフィスラブ」とかなり相性がいいようです。
特に、
・主人公にだけ甘い、特別感
・有能なのに恋愛だけ不器用
・「理解されなかった子」が理解される
みたいな関係性を書く時に数字が伸びやすい。
今回、自分でも意外だったのは、大人読者向けのオフィスラブなのにキスシーンもベッドシーンも存在しないことです。
つまり、過激なシーンや身体的接触がほとんどない状態で、感情描写だけでほぼ引っ張っている。
大人の女性を読者層としているオフィスラブとしては、かなり珍しい部類だと思います。
それでも、読者の皆様は面白いと思って読んでくださる。想像以上に読んでいただけて、とてもありがたく感じています。
この作品を書こうと思った理由は、もともと現代恋愛が好きであること、エブリスタで「オフィスラブ」をテーマにしたコンテストが開催されたことがきっかけでした。
登場人物を設計するときに、「そういえば、オフィスラブって黒髪の男性が多いな」ということに気付いたのです。
このコンテスト、コミカライズを検討する場合があると書かれています。
そうなると、わかりやすいビジュアルの強さが必要になる。
それを考えたときに、要求されている作品に、自分の好きな要素を混ぜることで、オリジナリティを出したいと考えました。
銀髪碧眼で第一印象が冷徹。でも主人公にだけ甘い。
冷たく見える上司なら、外野から見たイメージが「機械人間」なのに、ヒーロー視点になった途端、感情の湿度が見えるとか……。
もちろん、インパクトの強さだけでは一発芸になってしまいます。
銀髪である理由や事情、それによって発生する問題が必要になる。
例えば、
・祖母が英国人のクォーターである
・銀髪が原因で教師から黒染めを強要されている
・他の生徒からも不良と誤解され恐れられている
・それで心を閉ざして高校の図書室にこもる
・図書室でヒロインに出会った
――といったふうに、メインストーリーに絡めていきました。
ヒーロー像の設定を詰めたら、それに合わせてヒロインも設計していきます。
・図書室に来るくらいだから本が好きなんだろう
・純文学好きで周囲のクラスメイトと話が合わない
・ヒーローと話が合う
・ヒロインはヒーローの噂を知っていても話しかける積極性が必要
そんな感じでメインキャラ2人は決まっていきました。
次に、ストーリーの内容ですが――。
敢えて、刺激を減らすことにしました。
というか、このメインキャラ2人で過激なシーンに至るイメージが全く浮かばない。
高校時代の先輩後輩、しかも在学中に交際していない。
この関係性に、無理に身体的接触を加えると作品の雰囲気が崩れる危険性がありました。
その代わり、会話劇と2人の距離感はかなり意識しています。
例えば、
ヒーロー「作家さんに原稿の取り立てに行くぞ」
ヒロイン「借金取りみたいですね! 頑張ります!」
こういった感じのコミカルな会話を回して、「付き合ってないのに息はぴったり」という関係性を保っています。
ですが、恋愛シーンもしっかり積み上げています。
例えば、ヒーロー視点での独白。
「 ああ、そうだ。
渇いていたのは、俺の方だ。
呼吸が浅くなるほど、ずっと小日向に焦がれている。
図書室の窓際、日の当たる席で、お前と座って。
俺の心は、ずっとお前の日だまりに溶けていた。」
「読者が求めているもの」を突き詰めて考える時間はとても楽しかったです。
シナリオでも小説でも、「自分が書きたいもの」だけでは届かない。
相手が何を求めているのかを考え、その上で自分らしさをどう混ぜるか。
その試行錯誤は、創作だけでなく仕事にも通じる感覚だと思っています。