私はこれまで大手制作会社で多くのWebサイト制作に携わってきましたが、いつも最終的にたどり着く結論があります。それは、最高のWebサイトとは、複雑な芸術作品ではなく、完璧な自動販売機であるべきだ、ということです。
「デザイン」というと、多くの人は「いかに美しくするか」「いかに個性を出すか」と考えがちです。しかし、私の仕事の基本は、「ビジネス課題を解決するためのツール」としてのデザインです。
たとえば、喉が渇いた人が自動販売機にたどり着いたとしましょう。彼は、どのボタンを押せば冷たい飲み物が出てくるか、一瞬で理解します。商品の選択肢が整然と並び、お金を投入する場所も、ボタンを押す場所も、すべてが直感的です。
これが、多くの企業サイトになるとどうでしょう。
訪問者が「問い合わせたい」という目的をもって訪れたのに、問い合わせフォームへの導線が迷路のようになっている。あるいは、「このサービスについて知りたい」と思っているのに、専門用語の羅列で情報が整理されていない。これは、自動販売機でいざお金を入れようとしたら、飲み物が出てくる穴がどこにも見当たらないような状態です。
Webサイトにおける自動販売機の役割とは、「ユーザーが持つ課題」を「クライアントが持つ解決策」と最短距離で結びつけ、対価(コンバージョン)を得ることです。
そのためには、情報設計(IA)の段階で、徹底的にユーザーの動機と行動を分析し、迷う余地のない「直感的な使いやすさ(UI/UX)」を設計しなければなりません。
美しいデザインは、自動販売機の清潔感や、商品の魅力的なパッケージに相当します。もちろん重要です。しかし、それ以上に重要なのは、お金を入れたら確実に目的のものが手に入るという「機能保証」と「導線の明確さ」です。
制作会社時代、私は大手不動産会社のコーポレートサイトリニューアルで、サイトの読み込み速度を改善し、直帰率を15%削減しました。また、イベント集客用LPの改善では、コンバージョン率を平均1.5%から3.2%に向上させました。これらは、派手なデザイン変更ではなく、訪問者の「使いやすさ」と「目標達成への導線」を自動販売機のように突き詰めた結果です。
私がお手伝いするのは、単に見た目の良いサイトを作ることではありません。あなたのビジネスに24時間365日貢献し続ける、故障知らずの優秀な自動販売機をWeb上に構築することです。
もし、あなたの会社のWebサイトが、見た目は綺麗だけど売上に貢献しない「飾られた絵画」になってしまっているなら、ぜひ一度、その導線を見直しませんか?