FM(維持管理)重点版BIMが建物の「運用コスト」を劇的に変える理由**
FM(維持管理)重点版
BIMが建物の「運用コスト」を劇的に変える理由**
オリエンタルヒルズ株式会社
代表取締役社長 晴山佳須夫
BIMは設計・施工段階のためだけの技術ではありません。
むしろ世界的には、
「維持管理(FM)こそBIMが最も価値を生む領域」
として位置づけられています。
その理由は明確です。
建物のライフサイクルコスト(LCC)は、
施工費より“運用・維持管理費”の方が圧倒的に大きいからです。
- 建設費:20〜30%
- 維持管理費:70〜80%(清掃・修繕・点検・更新 など)
つまり維持管理のDXは、
企業・自治体の財務を左右する“巨大な改善余地”を秘めています。
以下では、FMに特化したBIM導入モデルと費用効果を詳述します。
◆ 1|FMで発生している“見えないムダ”はどこにあるのか?
自治体施設・病院・学校・商業施設など、
規模に関わらず次の課題がほぼ共通して発生しています。
① 設備台帳がバラバラで更新されない
- 図面CADデータ
- Excel台帳
- 紙の点検記録
- メーカー資料PDF
情報が散在し、実態と合っていない。
② どの設備が「いつ・どこに・どの型番」で設置されたか不明
修繕時に調査だけで半日〜数日かかることも。
③ 交換周期が管理されず、突発修繕が頻発
計画的な更新が行えず、コストが高止まり。
④ 過去トラブルの履歴が共有されない
担当者が変わるたびに“情報のリセット”が起きる。
⑤ 清掃・点検・警備など委託業務の評価が曖昧
エビデンスデータがなく、委託費の妥当性を検証しにくい。
これらはすべて、
**「建物の情報が統合されていない」**ことが根本原因です。
BIMはこの問題を一気に解決します。
◆ 2|FM-BIMの全体構造(図解)
┌──────────────────────────┐
│ BIMモデル(Revit / IFC) │
│ ・建築モデル ・構造モデル ・設備モデル(MEP) │
│ ・メーカー型番 ・容量値 ・点検項目 │
└───────────┬───────────────┘
▼
┌──────────────────────────┐
│ FMデータベース(BIM-FM) │
│ ・更新履歴 ・交換周期 ・取扱説明書 │
│ ・点検ログ ・作業記録 ・故障情報 │
└───────────┬───────────────┘
▼
┌──────────────────────────┐
│ FMプラットフォーム(CMMS/CAFM) │
│ ・修繕管理 ・予防保全 ・清掃/警備管理 │
│ ・委託業務評価 ・稼働率モニタリング │
└──────────────────────────┘
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│ BIMモデル(Revit / IFC) │
│ ・建築モデル ・構造モデル ・設備モデル(MEP) │
│ ・メーカー型番 ・容量値 ・点検項目 │
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┌──────────────────────────┐
│ FMデータベース(BIM-FM) │
│ ・更新履歴 ・交換周期 ・取扱説明書 │
│ ・点検ログ ・作業記録 ・故障情報 │
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│ FMプラットフォーム(CMMS/CAFM) │
│ ・修繕管理 ・予防保全 ・清掃/警備管理 │
│ ・委託業務評価 ・稼働率モニタリング │
└──────────────────────────┘
BIMが“建物のマスターデータ”となり、
FM全体のDX基盤になるという構造です。
◆ 3|FMで必要となるBIMデータ項目(実務レベル)
維持管理では、図面情報より「属性情報(Attribute)」が重要です。
特に以下のデータがFMでは決定的な価値を持ちます。
● 設備機器の属性情報
- メーカー
- 型番
- 製造年
- 耐用年数
- 点検周期
- 更新優先度
- 取扱説明書
- 保証書PDF
● 建材の仕様
- 床材
- 壁材
- 天井材
- 防火性能
- 交換コスト
● 空調・電気・衛生設備の詳細
- ダクト・配管径
- ルート
- バルブ位置
- 系統番号
- 点検ポイント
● 過去の点検履歴
- 修繕履歴
- トラブル発生位置
- 作業者名
- 作業時間
これらはすべて Revit / IFC に情報として埋め込むことが可能です。
◆ 4|FM-BIM導入の費用モデル(庁舎・学校・病院向け)
規模や設備量に応じて変動しますが、一般的な費用帯は次の通り。
● BIMモデル(FM用情報付与)
50〜300万円
50〜300万円
※既存図面からのBIM化は追加費用(80〜400万円)
● FMデータベース構築
100〜300万円
100〜300万円
● FMプラットフォーム(CMMS)連携
年50〜150万円(クラウド利用)
初期連携:50〜150万円
年50〜150万円(クラウド利用)
初期連携:50〜150万円
● 初年度総額(目安)
250〜700万円
250〜700万円
※庁舎や大型病院では1,000万円以上になる場合もあり。
◆ 5|FM-BIMの費用対効果(定量モデル)
以下は、
延床5,000〜20,000㎡規模の公共施設をモデルにしたシミュレーションです。
① 設備点検の効率化:20〜40%削減
点検時間の短縮・検索時間ゼロ化。
年間点検費:1,000万円
→ 200〜400万円の削減
年間点検費:1,000万円
→ 200〜400万円の削減
② 突発修繕の減少:年間15〜30%削減
計画保全が可能になるため。
突発修繕費:500万円
→ 75〜150万円削減
突発修繕費:500万円
→ 75〜150万円削減
③ 更新計画の最適化:5〜10%のコスト抑制
更新時期の平準化・一括契約の効率化。
更新費:2,000万円/年
→ 100〜200万円削減
更新費:2,000万円/年
→ 100〜200万円削減
④ 委託業務の透明性向上:5〜15%の改善
清掃・警備・保全委託費の評価精度向上。
委託費:1,500万円
→ 75〜225万円削減
委託費:1,500万円
→ 75〜225万円削減
● 年間総メリット(モデル値)
450〜975万円 / 年
450〜975万円 / 年
● 5年スパンでの総効果
5年で 2,250 〜 4,875万円 の改善幅
5年で 2,250 〜 4,875万円 の改善幅
→ FM-BIMは“確実に回収できる投資”であることが分かる
◆ 6|FM-BIM導入の成功条件
① 維持管理担当者と設計者が早期に連携すること
設計段階でFM要求を反映するのが最も費用対効果が高い。
② 必要な属性情報の“範囲”を最初に決める
やりすぎると過剰コストになるため、
FMに必要なデータ仕様を定義する。
③ FMスタッフが“使い続けられる”システムにする
複雑すぎる管理ツールは定着しない。
④ 公共側は“BIMモデルの仕様書”を明確にする
国交省が推奨する
「FM向けBIMモデル標準」に準拠させるのが安心。
◆ 結語:維持管理BIMは、建物の“寿命”と“財務”を救う技術である
設計・施工段階だけでBIM活用を止めるのは、
建物のポテンシャルを半分しか使っていません。
30年、50年と続く維持管理フェーズこそ、
BIMが本当の力を発揮する場所です。
- 点検の省力化
- 修繕コストの最適化
- 長寿命化
- データに基づく予算策定
- 情報の承継
- 施設運営の透明性
これらの価値は、公共施設であれ民間施設であれ、
社会のインフラとして極めて重要です。
オリエンタルヒルズ株式会社は、
FMに特化したBIM導入・運用設計を支援し、
建物のライフサイクル全体で価値を最大化する取り組みを推進してまいります。