歓声の向こう側で、僕らも笑っていた
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私はいくつか仕事をかけもちしていて、平日はライティングの勉強やネットの仕事、週末は音楽イベントのアルバイトをしています。9月と10月は特にイベントが多く、高校の文化祭からプロミュージシャンの演奏まで、毎回違う現場で、毎回違う体験ができました。
先日、県内の野外フェスで楽器のセッティングを担当したときのことです。ふと気づいたのは、誰もが「音楽を楽しむ人のために」働いているということでした。音響、照明、舞台、飲食、警備など、あらゆる業種が主催者の舵取りのもと、一つの音楽イベントを成功させるために、スタッフが息を合わせて働いていました。そこは怒号が飛び交う厳しい現場かと思いきや、表も裏も素敵な笑顔が交わされていました。
出演者を待ち構え、機材を整えて送り出すバックステージは、常に嵐のような忙しさでした。あわただしさの中にあっても、スタッフも出演者も冷静かつ穏やかに声を掛け合い、天候の変化や機材トラブルにも落ち着いて対応しながら、一瞬一瞬を積み重ねていく。ステージ上での転換作業中に客席に目をやると、お客さんは美味しい料理を片手に、それぞれの時間を過ごしています。この後、最高の演奏が始まることを待ちわびながら、日差しや雨をしのぐ様子も見られました。
それでも演奏が始まれば、アーティストを万雷の拍手で出迎え、全力で声を上げて楽しむ。その姿を見ながら「同じ時間を作っている仲間なんだ」と思うと、胸が温かくなりました。ステージ裏で待機していましたが、観客からパワーをもらうという瞬間を、初めて実感したかもしれません。
すべてが無事に終わり、日の出とともに準備したステージの灯が落ちたころには、すっかり日も暮れていて、帰りのトラックを待つ間に流れ星を探しました。達成感と安堵が入り混じりました。
お客さんの笑顔も、一緒に働いた仲間の笑顔も、どちらも最高でした。
また、あの音の渦の中で働けたらいいなと、心からそう思いました。