街角に立つ信号機を見ていると、自分の働き方が妙に重なって見える瞬間があります。赤は止まれ、青は進め。シンプルなルールで車や人を整理してくれる仕組みですが、その中で唯一「曖昧」なのが黄色や点滅です。この曖昧な時間があるからこそ、次にどう動くかを考え、判断する余白が生まれる。フリーランスとして働く自分にとっては、この“点滅”こそが一番大事だと気づきました。
会社員時代は信号のように赤と青だけで動いていました。会議が始まれば走り出し、指示が出ればすぐ止まる。ルールは明快で、迷う余地はほとんどありません。けれどフリーランスになると、赤も青も誰も押してくれない。どこで止まり、どこで進むかを決めるのは自分自身です。そのときに頼りになるのが、信号機でいう“点滅”の時間なのです。
例えば新しい案件の相談が来たとき。すぐに受ける青信号でもなければ、完全に断る赤信号でもない。少し立ち止まり、相手の意図や未来の広がりを考える。その判断の猶予こそが点滅の役割であり、自分の働き方を形づくるリズムになっています。
面白いのは、信号の点滅は一瞬しかないことです。長すぎると混乱を招く。短すぎると考える余地がない。だからこそ人はその刹那に集中して判断を下す。フリーランスの仕事も同じで、考え続けても永遠に正解は見つからない。与えられた少しの時間で決めるからこそ、次の景色が見えてくるのです。
そして気づいたのは、チームづくりにも信号機の要素があること。全員が赤と青だけで動こうとすると硬直してしまう。誰かが「点滅」の役を担い、迷いや余白を許容することで、柔軟なアイデアや方向転換が生まれる。プロジェクトの中で一人でもそういう存在がいると、不思議と場の雰囲気が軽やかになります。
僕自身はエンジニアとして、コードを書くこともあれば顧客との調整をすることもある。その間で常に点滅のような役割を果たしている感覚があります。決められた動きに従うだけでなく、曖昧さを受け入れ、次に進むための呼吸をつくる。それが信号機から学んだ働き方のヒントです。
次に信号を見たとき、赤と青に目を奪われるのではなく、その一瞬だけ光る点滅に注目してみてください。そこには、決断の余白と創造のタネが隠れているかもしれません。
 
 
