昼休み、なんとなく机の引き出しを整理していた。奥の方に押し込まれた封筒を見つけて、開けてみると中には一枚のメモ。「まだ迷ってる?でも、それでいい」と書かれていた。自分の字だった。日付は3年前。新しい部署に異動した直後、仕事に自信を失いかけていた頃だ。
その時の気持ちが一気に蘇った。環境が変わって、何もかもうまくいかなくて、でも誰にも弱音を吐けなかった。そんな自分に向けて、未来の自分宛にメモを書いたのを思い出した。正直、当時は「いつか笑える日が来る」と信じて書いたというより、信じたいだけだった。
でも、今こうしてそのメモを見つけた瞬間、少し笑ってしまった。あの頃の自分が思っていた“未来の自分”とは、まったく違う形でここにいる。完璧でも、成功しているわけでもないけど、それでもちゃんと進んできた。
引き出しの奥には、他にも小さなメモがいくつかあった。「とりあえず今日も会社に行った。それだけでえらい」「失敗しても、次の自分が拾えばいい」「誰かの“ありがとう”を忘れないこと」。どれも拙いけれど、当時の自分の精一杯が詰まっていた。
そのメモを一つひとつ読み返しているうちに思った。未来の自分を作るのは、結局“過去の自分”の積み重ねなんだと。たとえ小さなメモでも、それは確かに「次の自分」へのエールだった。
仕事をしていると、未来にばかり意識が向く。キャリアプラン、スキルアップ、目標設定。もちろんそれは大事だ。でも、過去の自分が残した「小さな痕跡」にも、意外とたくさんのヒントがある。成長の証拠は、履歴書の中だけにあるわけじゃない。
私はその日から、自分のデスクに“未来メモ”を置くようになった。今日の自分から、半年後の自分へ。内容はいつもささやかだ。「明日も少し笑えますように」「この悩み、きっとネタになる」「迷っても、それも成長」。この習慣が不思議と心を軽くしてくれる。
メモを書くことで、未来に小さな期待を託す。見つけた時にそれが叶っていなくてもいい。ただ、その瞬間に“続けてきた自分”を思い出せることが大事だ。
仕事も人生も、結局はこの繰り返しなんだろう。昨日の自分が書いたメモを今日の自分が読み、今日の自分がまた未来の誰かへ残す。進むたびに、少しずつ形を変えながら。
机の引き出しを閉める前に、もう一枚だけ書いた。「今の自分、わりといい感じだよ」。きっと、未来の私はこのメモを見てまた笑うのだろう。あの時よりも少し優しい顔で。