【前嶋拳人】郵便ポストが語る働き方のヒント
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通勤途中、街角にある赤い郵便ポストにふと目を留めた。普段はスルーしてしまう存在だが、その日、何気なく差し出された手紙や広告を眺めていると、不思議な感覚にとらわれた。郵便ポストは毎日同じ場所で、同じように働いている。雨の日も風の日も、誰かの思いや情報を黙々と受け止め、送り出している。その姿勢を見ていると、働き方や責任感について考えさせられる。
ポストは決して主役ではない。目立つ存在でもない。しかし、存在することで街のコミュニケーションが円滑になり、人々の生活が少しずつつながっていく。仕事も似ているのではないか。目立つプロジェクトや大きな成果ばかりが評価されがちだが、日々の小さな積み重ねや誰かのために尽くす作業があってこそ、組織や社会は回る。郵便ポストが静かに果たしている役割は、働く者としての理想の姿を象徴しているように思えた。
さらに面白いのは、ポストの周りに集まる人々だ。手紙を投函する人、チラシを取りに来る人、郵便局員が回収する時間。その一瞬一瞬のやり取りを観察していると、仕事や人間関係のあり方を再確認できる。自分の行動が誰かの生活や考え方に影響を与えていることを、ポストはさりげなく教えてくれる。目立たない存在でも、確かに価値を生み出しているのだ。
ある日、私はポストに投函する手紙を自分で書きながら、改めて働く意味を考えた。目に見える成果だけでなく、誰かのために行動すること、責任を全うすること、その積み重ねこそが自分のキャリアや価値につながる。郵便ポストはそれを無言で示してくれているように思えた。
それ以来、街を歩くときは郵便ポストに目を向けるようになった。特別な道具や装置ではなく、ただそこにある存在が、働き方や日常の意味を教えてくれる。忙しさに追われる日々でも、ポストの静かな働きを思い出すと、自分のペースで丁寧に行動することの大切さを思い出すことができる。
郵便ポストは、街の片隅で黙々と仕事をこなす英雄だ。目立たなくても価値ある行動は必ず誰かに届く。働くことの本質を再認識させてくれる存在として、今日も私は歩きながらポストに感謝している。