【前嶋拳人】退屈な会議を「宝探しゲーム」に変えてみたら、会社がちょっと面白くなった話
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会議の時間というのは、なぜこうも眠気を誘うのだろう。誰かの長い説明、資料のスライドショー、形だけの確認。そんな空気が漂う瞬間、私はいつも心の中で時計とにらめっこをしていた。ところがある日、ふとした思いつきで、この退屈をゲームにしてしまえばいいのではないかと考えた。ルールは単純だ。会議中に「隠された宝」を探すこと。それは金銀財宝ではなく、誰かの一言に潜む未来の可能性だったり、資料の端に載っている小さな数字だったりする。つまり、価値を見落としがちな断片を「宝」と呼び、見つけた人が勝ちという遊びだ。
最初に試したのは、売上データの報告会だった。毎月決まった数字の羅列で、正直ほとんどの人は聞き流しているように見えた。そこで私はメモ帳に「隠れた成長率を見つける」と書き込み、数字を眺める目を変えてみた。すると全体は微減しているのに、ある地域だけ前年比120%と伸びている箇所に気づいた。発表者ですら触れずに流していた部分だ。そこで私は手を挙げて「この地域、なぜこんなに伸びているんですか」と聞いてみた。会議室が一瞬ざわめき、担当者が詳細を話し始めると、その伸びが新たな顧客層の開拓によるものだとわかった。その後、この地域の施策を他に展開する議論が生まれ、退屈な会議が急に熱を帯びていった。
この経験が面白くて、次からは同僚も巻き込んでみた。議題のどこに「宝」が隠れているかを、それぞれ探してみようという提案だ。例えば「会議中に誰もスルーした数字を拾った人が勝ち」や「一番意外な提案を引き出した人が勝ち」というルール。すると普段は発言しないメンバーまで、小さな発見をシェアするようになった。会議の空気は少しずつ変わり、ただの報告の場から、思いがけない発見を楽しむ場へと変化していった。
面白いのは、この「宝探しゲーム」を続けるうちに、普段の仕事の見方まで変わってきたことだ。例えば日報の一行に潜む小さな工夫や、メールの言葉尻に込められた気遣いに気づくようになる。人の発言を「流す」のでなく「拾う」癖がつくと、チームの関係性も不思議と柔らかくなっていく。仕事を効率化することばかりに目を向けるのではなく、効率の裏に隠れた発見を楽しむ余裕が持てるようになったのだ。
退屈な会議を抜本的に変える魔法なんて、たぶん存在しない。でも見方を少し変えて「宝探し」と思えば、同じ空間が少し違って見えてくる。人は本来、遊びの中で一番集中できる生き物なのだと思う。もし次に会議で眠くなったら、机の上に「隠された宝」を探してみてほしい。そこから生まれる小さな発見が、あなたのチームをちょっとだけ前に進めるかもしれない。