【前嶋拳人】異世界から来たエンジニア
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今日は、少し変わった視点でお話しさせてください。僕がこれまでのキャリアを振り返ったとき、まるで二つの異なる世界を行き来してきたような感覚があるんです。
新卒で入った大手SIer。そこはまさに「古き良き」魔法の世界でした。 分厚い仕様書が巻物のように積み上げられ、COBOLやJavaといった呪文を唱え、大規模な基幹システムという巨大な城を築いていく。一人一人が高度な専門技術を持つ職人であり、チームで知恵を出し合い、ひとつの壮大な物語を紡いでいました。
何十年も前から脈々と受け継がれてきた開発の流儀や、品質を追求する姿勢は、まるで歴史ある王国の作法を学ぶようでした。要件定義、設計、実装、テスト、運用保守。それぞれの工程が厳密に定められ、時間をかけて丁寧に作り上げていく。その過程で得た経験とスキルは、僕にとってかけがえのない「魔法」となりました。
そして、フリーランスとして飛び込んだWeb系スタートアップの世界。ここは、まるでSFの世界でした。 目まぐるしく変化する技術トレンドが、日夜新しいツールやフレームワークを生み出します。Ruby on RailsやReactといった未来の道具を使いこなし、ユーザーの反応をダイレクトに感じながら、瞬く間にサービスを形にしていく。
アジャイル開発という、まるでワープ航法のような速さで進むプロジェクト。今日の常識が明日には古くなる、そんなスピード感が何よりも重要視されます。そこでは、仕様書よりもコードそのものが全てを語り、APIやAWSといった最新技術を駆使して、小さなチームで驚くほど大きな成果を出します。
この二つの世界を経験して気づいたことがあります。 どちらの世界にも、それぞれの美しさがあるということ。
前者の世界で培った、堅牢なシステムを設計する力、何千人ものユーザーを支える安定性への意識は、後者の世界でも大いに役立っています。逆に、後者の世界で学んだ、変化に対応する柔軟性や、ユーザー目線で素早く改善していく姿勢は、前者の世界の課題を解決するヒントになるかもしれません。
僕は、この二つの世界の言語を話せる「通訳者」でありたいと思っています。
大規模な基幹システムを支えてきた経験と、モダンなWeb開発のスピード感。一見、相容れないように見える二つの価値観を組み合わせることで、より良いものづくりができると信じています。
このユニークなキャリアを活かし、これからも様々な企業やプロジェクトと関わっていきたいです。