現場で心がけていること
現場で心がけていること
──向井聡一・一級建築士の現場哲学
建築は図面だけでは完成しません。
細部の精度、職人さんの技、現場の空気感——
それらすべてが集まって、ようやく“家”という形になります。
だからこそ、私は現場に足を運ぶとき、いくつか必ず心に留めていることがあります。
今日は、その「現場で心がけていること」をまとめてみました。
◆ 1. 現場に“空気の乱れ”がないかを見る
現場に入った瞬間の空気で、その日の状態はある程度わかります。
- 作業が滞っていないか
- 職人さん同士の意思疎通は取れているか
- 細かな段取りが詰まっていないか
図面ではなく、現場そのものの“表情”を見ることが、私の最初のチェックです。
◆ 2. 職人さんとの対話を欠かさない
職人さんは、建築の最前線に立つプロです。
図面に書ききれない細部の判断は、彼らの技術とセンスによって支えられています。
だから私は、
- 「今日困っていることはありますか?」
- 「この納まり、やりにくくないですか?」
と必ず声をかけます。
意見を尊重し、互いに信頼し合うことで、現場は驚くほど良い方向に進みます。
◆ 3. 図面通りかどうか“体感”で確かめる
数値や寸法は大切ですが、
完成後に住むのは“人”です。
- 窓の高さの見え方
- 廊下の幅の狭さ/広さ
- 天井の抜け感
- 光の入り方や陰影のバランス
図面上では正しく見えても、現場で体感すると違和感を覚えることがあります。
私は必ずその場で立ち位置を変え、「住む人の視線」で空間を確認するよう心がけています。
◆ 4. 施工ミスを“早い段階で”見つける
どれだけ優秀な職人さんでも、人の手で行う以上、ミスは起こり得ます。
重要なのはそれを 早期に見つけること。
- 下地のズレ
- 配管位置の誤差
- 木材の反り
- 断熱材の隙間
完成間近での手直しはお客様にも職人さんにも負担が大きいため、
工程の節目ごとに細かくチェックするようにしています。
◆ 5. 気になる点はその場で解消する
現場で、「あれ?」と思うことはすぐに確認します。
小さな違和感は、放っておくと大きな問題に繋がるからです。
すぐに
- なぜそうなったか
- 他に影響する場所はないか
- 最良の修正方法は何か
を職人さんと一緒に検討します。
“遠慮より誠実さ”
これは独立してから特に大切にしている考え方です。
◆ 6. 安全と整理整頓
現場がきれいだと、それだけでトラブルが減ります。
怪我の防止にもなりますし、何より作業効率が上がります。
- 材料の置き場
- 通路の確保
- ゴミの撤去
- 工具の整理
- 足場の安全確認
「きれいな現場は、いい建物をつくる」
これは職人さんたちと共有している共通の価値観です。
◆ 7. お客様の想いを現場に伝える
設計者として最も大切にしているのが、
**“お客様の想いを現場に持ち込むこと”**です。
「このリビングはご家族全員が集まる大事な場所です」
「キッチンは奥様が特にこだわっているんです」
そうした背景を職人さんに伝えると、
同じ作業でも丁寧さや気持ちが変わることがあります。
人の想いが宿って初めて、建物は“家”になる。
そう感じる瞬間が、現場には必ずあります。
◆ 最後に
現場は、建築士の力量がそのまま表れる場所です。
図面の精度、職人さんとの信頼関係、判断のスピード。
ひとつひとつの積み重ねが、住む人の何十年もの暮らしを左右します。
これからも、誠実に、丁寧に、現場と向き合い、
「この家、頼んで良かった」と言っていただける仕事を続けていきたいと思います。