商業施設プロジェクト施工監理ノウハウ
商業施設プロジェクト施工監理ノウハウ
設備監理編
1. 設備監理の基本姿勢
商業施設における設備計画は、快適性・省エネ・メンテナンス性の三本柱が重要です。
しかし、設計図面だけでは見えない“現場のリアル”があります。監理者としては、施工図・配管ルート・納まりを逐一確認し、「使いやすさ」と「施工性」の両立を図ることが欠かせません。
2. 空調・換気
- ゾーニングに応じた方式確認:カフェとバックヤードで空調方式を分け、効率性を確保。
- 吹出口の位置・高さ:利用者に直接風が当たらないか、施工前に現地でシミュレーション。
- ダクト経路:梁・天井内のスペースと干渉しないかを、施工図で早期にチェック。
事例:ダクトと照明器具の干渉
施工段階で梁とダクトが競合し、計画通りの照明ラインが設置できない事態が発生。
→ 解決策:設備業者・電気業者とその場で打合せし、ダクトルートを再設定。照明演出を維持しつつ、施工性も確保。
👉 教訓:設備は後回しにせず「施工図を前倒しで突き合わせる」ことが必須。
3. 給排水・衛生設備
- 勾配の確保:厨房・トイレの排水勾配を現場で確認。清掃性や詰まり防止に直結。
- 清掃ハッチ・点検口:将来的なメンテナンス性を考慮して設置位置をチェック。
- 防水処理:厨房や水回りは、床仕上げ前に防水層の施工精度を確認。
事例:厨房配管の高さ問題
実際の配管ルートが設計より高く施工されてしまい、床仕上げレベルに影響。
→ 解決策:仕上げ材の厚み調整と防水層の再施工で対応。
→ ポイント:配管高さは早期に現場確認しないと手戻りが大きい。
4. 電気・照明
- 照度分布:商品棚やカウンター周りに必要な照度が確保されているか。
- コンセント位置:店舗運営を想定し、家具・機器配置と干渉しないか。
- メンテナンス性:分電盤や制御盤の前面スペースが確保されているか。
事例:照明器具の取付高さズレ
施工時に器具の高さが図面より下がり、空間バランスが崩れる恐れあり。
→ 解決策:現場で実測し、器具取付位置を再設定。施主と共に確認後に修正。
5. まとめ
設備監理の要点は、「見えなくなる部分」を徹底的にチェックすることです。
ダクト、配管、配線──完成後は天井裏や床下に隠れてしまう要素こそ、後々の使い勝手や維持管理に直結します。
監理者の役割は、「完成したときの見た目」だけでなく、「10年先の使いやすさ」を守ること。
今回のプロジェクトでも、現場での小さな判断の積み重ねが、施設の快適性と持続性につながると実感しました。