【高倉友彰】チームの言語と、翻訳者としてのエンジニア
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こんにちは、フリーランスシステムエンジニアの高倉友彰です。
フリーランスとして、様々な企業のプロジェクトに参加する中で、いつも新鮮な驚きがあります。それは、会社やチームごとに、まるで異なる「言語」を話しているかのように感じられることです。
もちろん、日本語でコミュニケーションは取っています。でも、ここでいう「言語」とは、チームが共有する文化や価値観、仕事の進め方、そして独特の専門用語などのことです。大手SIerにいた頃は、組織全体で統一された「言語」が使われていましたが、スタートアップの世界では、チームごとに全く異なる「言語」が形成されていることが多々あります。
あるチームは、ユーザーファーストを徹底し、ユーザーの声という「言語」を中心にプロジェクトが回ります。別のチームは、技術的な挑戦を重視し、最新技術という「言語」でコミュニケーションを取ります。また別のチームは、ビジネスの成長を最優先し、KPIや収益という「言語」で会話します。
私は、こうした異なる「言語」が飛び交う環境で、いわば「翻訳者」のような役割を担っていると感じています。
例えば、ビジネスサイドのメンバーが「ユーザーがもっと直感的に使えるようにしたい」と話したとします。これは、エンジニアにとっては「UI/UXを改善する」という「技術の言語」に翻訳しなければなりません。さらに具体的に、「クリック数を減らす」「アニメーションで操作をガイドする」といった「具体的なタスクの言語」に落とし込む必要があります。
逆に、エンジニアが「このライブラリをアップデートしないと、セキュリティリスクが高まります」と話したとします。このままでは、ビジネスサイドのメンバーには伝わりにくいかもしれません。そこで私は、「サービスの信頼性を保つために、定期的なメンテナンスが必要です」といった「ビジネスの言語」に翻訳し、その重要性を伝えるように努めます。
この「翻訳」作業は、単に言葉を置き換えるだけではありません。異なる言語の背景にある、それぞれのチームの価値観や優先順位を深く理解することが不可欠です。ビジネスサイドが何を最も重視しているのか、デザイナーがどのようなユーザー体験を目指しているのか、エンジニアがどんな技術的な課題を抱えているのか。それぞれの「言語」の文脈を理解して初めて、正確で効果的な翻訳が可能になります。
そして、この翻訳を通じて、チーム全体のコミュニケーションが円滑になり、プロジェクトがスムーズに進むのを実感したとき、私はこの仕事に大きなやりがいを感じます。異なる専門性を持つメンバーが、お互いの「言語」を理解し、尊重し合うことで、一つの素晴らしいサービスが生まれるのです。
Wantedlyをご覧の皆さんの中には、これから新しいチームに飛び込もうとしている方もいるかもしれません。もし新しい環境で、「あれ、何か話が噛み合わないな…」と感じたときは、ぜひ「翻訳者」の視点に立ってみることをお勧めします。相手の「言語」を理解しようと努めることで、きっと新しい発見や、チームとの一体感が生まれるはずです。
これからも、様々なチームの「言語」を翻訳し、人と技術を繋ぐ架け橋となるエンジニアであり続けたいと思います。