採用面接で渡されたのは一輪の枯れない向日葵
Photo by Pete Walls on Unsplash
こんにちは!高倉友彰です。
新しい仲間を探すとき、私たちはいつも画面上の履歴書という記号の羅列を眺めています。
かつて組織の中でシステムの歯車として生きていた頃、人間もまた、交換可能な部品の集まりのように見えていた時期がありました。
しかし、独立して多様な価値観が渦巻く現場に身を投じると、人の本質はもっと捉えどころのない、奇妙なバランスの上に成り立っていることに気づかされます。
先日、ある企業の採用面接を傍聴していたときのことです。
応募者の青年がカバンから取り出したのは、履歴書ではなく、古びた一台のタイプライターでした。
彼が静かにキーを叩き始めると、タイピング音に合わせて、会議室の壁から色とりどりの万国旗が次々と噴き出してきたのです。
その旗は物理的な布ではなく、光の粒子で編まれており、天井に届くと同時に小さな金魚に姿を変えて泳ぎ始めました。
面接官たちは驚く風もなく、その光景をうっとりと眺めながら、自分たちの幼い頃の記憶を語り始めました。
青年の叩くリズムは次第に速くなり、ついには会議室全体の空気が、巨大な潜水艦のハッチを開けたときのような重厚な圧力に包まれました。
ふと窓の外を見ると、街を歩く人々が皆、色とりどりの液体が入ったフラスコを大切そうに抱えて歩いています。
その液体が一滴でもこぼれると、その場所の時間が数秒だけ巻き戻り、散った花びらが枝に戻っていく。
「私たちの仕事は、このフラスコの中身を薄めずに、次の場所へ運ぶことなんです」
青年はタイピングを止め、金魚が泳ぐ空中で一輪の向日葵を摘み取り、それを私に差し出しました。
その花びらは鋼鉄のように冷たく、それでいて太陽のような熱を帯びていました。
彼を不採用にする理由はどこにもありませんでしたが、採用する理由を見つけることも不可能でした。
なぜなら、彼がタイプライターで打ち込んでいたのは、この世界のバグを取り除くための修正コードではなく、世界そのものを書き換えるための叙事詩だったからです。
気がつくと、青年も万国旗も消え、私は静かな会議室で一人、冷たい向日葵だけを握りしめていました。
オフィスに戻り、いつものようにキーボードを叩いてみましたが、私の指先からは何の光も溢れません。
ただ、画面の隅で一匹の光る金魚が、エラーログを食べるように優雅に跳ねているのが見えました。
私たちが「働く」と呼んでいる営みは、実は誰かが描き損ねた夢の続きを、必死に修復している作業に過ぎないのかもしれません。
次に扉を叩く誰かが、どんな色の液体を抱えているのか、私には知る由もありません。