【高倉友彰】オフィスの加湿器の蒸気を見つめて宇宙を語る
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打ち合わせスペースの隅で、静かに、しかし力強く蒸気を吐き出し続けている加湿器。私はふとした瞬間に、その白い霧が描くランダムな曲線に目を奪われ、思考が止まってしまうことがあります。多くの人は室内の湿度を一定に保つための便利な機械としか見ていないでしょうが、私にとってそれは、組織の中に漂う情報の流れや、予測不可能なトラブルの予兆を可視化するモニターのような存在です。一定のリズムで噴き出しながらも、空調の風や人の動きに左右されて形を変える蒸気の姿。それこそが、私たちが日々直面している、複雑で形のないプロジェクトそのものではないかと感じるのです。
かつて私は、あらゆる事象を完璧な設計図に落とし込み、計算通りに動かすことだけが正義だと信じていました。しかし、独立して多様なチームと関わる中で、完璧な計画ほど脆いものはないという真理に気づかされました。蒸気が空気の流れに応じて自由に姿を変え、それでいて部屋全体を潤すという目的を果たしているように、本当に強いチームもまた、予期せぬ変化を柔軟に受け入れながら、最終的なゴールへと辿り着く強かさを持っています。私は加湿器から漂う霧の揺らぎを見つめながら、今の自分たちのチームに必要なのは、ガチガチのルールではなく、こうした流動的な適応力なのではないかと自問自答しています。
もしあなたが、仕事の進め方に行き詰まりを感じているなら、一度立ち止まって身近な物理現象を観察してみてください。水の沸騰、雲の動き、あるいは加湿器の蒸気。そこには、論理だけでは説明しきれない、しかし確実な調和が存在しています。私は新しい仲間を探すとき、スキルセットの完璧さよりも、こうした曖昧な変化を楽しめる余白があるかどうかを重視したいと考えています。定規で引いたような真っ直ぐなキャリアよりも、時には迷走し、形を変えながらも、最後には誰かの力になれる。そんな蒸気のような存在感を持つ人と、これからの不確実な時代を泳いでいきたいのです。
機械的な正確さと、人間的な揺らぎ。その両端を理解し、適切にチューニングすること。それが今の私に課せられた、新しい役割なのだと感じています。加湿器の水が切れたときに鳴るアラート音は、時にシステムの警告音のように響きますが、それは再起動のためのポジティブな合図に過ぎません。私は再びタンクを満たし、新しく生まれ変わる霧の形を眺めながら、次の挑戦への設計図を頭の中で描き直します。私たちの仕事も、この蒸気のように、誰かの心に静かに浸透し、快適な環境を作り出すものでありたい。そんなことを考えながら、私は再びキーボードに向き合い、目に見えない論理の糸を紡ぎ始めます。世界を潤すのは、いつだってこうした些細な、しかし真摯な観察から始まる一歩だと信じて。