【元島純貴】「無音のSlack」が教えてくれたこと
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「このSlack、静かすぎない?」
ある朝、ふと気づいた。とあるスタートアップの支援で、週に数回ジョインしているプロジェクト。始業時間を過ぎても、Slackの通知がほとんど鳴らない。エラー報告も、タスクのリマインドも、誰かのつぶやきも、何もない。
不安になった。まるで深夜のオフィスにひとり取り残されたかのような感覚。
でもその日、ミーティングに入ってみると、全員が普通に作業を進めていた。しかも、かなり順調に。
10年以上エンジニアとして働いてきた中で、Slackやチャットツールは“温度感”を示すバロメーターだと思っていた。
通知が多いときはトラブル、少なすぎると停滞。そう思い込んでいた。
けれど、このチームは違った。
「設計の段階で“聞かれないコード”を書くようにしてるんです」
そう話してくれたのは、若手のフロントエンドエンジニア。驚いた。彼らは、コミュニケーションを削って効率化しているのではなく、“説明不要なコード”を目指していた。
仕様書も、Notionの整理も、デプロイの自動化も、徹底的に「手間が生まれないように」整えられていた。だからSlackは静かだった。
この静けさは、“問題が起きない設計”の成果だったのだ。
SIer時代の自分は、チャットツールに助けられていた。膨大な確認、すれ違う仕様、突然の変更。だからこそ、やり取りが多い=健全だと思っていた。でもそれは、根本の仕組みが未整備だったからかもしれない。
今、私は“静かなプロジェクト”が持つ美しさに魅せられている。
音がなくても、進んでいる。余白があるからこそ、コードも、人も、のびのびしている。
Slackが静かだと、不安になる人もいるかもしれない。でもそれは、チームが新しいフェーズに入ったサインかもしれない。
無音が物語るプロジェクトの成熟。
エンジニアとして関わりながら、働き方そのものを見つめ直す夏になりそうだ。