【城間勝行】靴紐がほどける瞬間に隠された組織の脆弱性
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朝の通勤路で靴紐がほどける瞬間、多くの人は単なる不運だと感じて通り過ぎるでしょう。しかし、私のようなシステム開発者の視点で見れば、それは極めて重大なシステムの停止を意味します。足元の安定という基盤が崩れ、歩行というメインプロセスが突如として中断される。この小さなアクシデントは、私たちが日々直面するビジネスの現場や、組織が抱える課題と驚くほど似た構造を持っているのです。
靴紐は、どれほど丁寧に結んでも、歩き続けるという外部の衝撃が加われば少しずつ緩んでいきます。これは、一度作り上げたルールや組織の体制が、時間の経過とともに形骸化していくプロセスと同じです。最初は固い結束を誇っていたチームも、日々の小さな摩擦やコミュニケーションの省略によって、気づかないうちに結び目が甘くなってしまう。そして、最も忙しい時期やスピードが求められる瞬間に、不意に足元をすくわれるのです。
私がフリーランスとしてスタートアップの現場に入る際、まず注目するのはこの靴紐の状態です。技術的に優れたプロダクトを作ること以前に、チームとしての結び目が適切に維持されているかを確認します。要件が定まらない混沌とした状況でこそ、この基礎的な結びつきがスピードを生むための唯一の担保になるからです。もし誰かの靴紐がほどけそうなら、それを放置せずに立ち止まって結び直す勇気が必要です。
一方で、絶対にほどけないようにと、強力な接着剤で紐を固定してしまうのは最悪の選択です。それは、変化に対応できないガチガチに固まった古いシステムのようなものです。靴を脱ぐ必要があるとき、あるいは紐を調整したいときに、柔軟に変更できない状態はリスクでしかありません。私たちが目指すべきは、激しい動きには耐えるけれど、必要に応じていつでも解き、形を変えられる。そんなしなやかな強さを持った結び方なのです。
誠実であるということは、ただ真面目に紐を結ぶことだけではありません。常に緩みをチェックし、状況に合わせて締め具合を調整し続ける継続的なメンテナンスの精神を指します。私は開発パートナーとして、単に指示通りのものを作るだけでなく、その組織の歩行を止めないための靴紐の点検も一緒に行いたいと考えています。
ビジネスという長い旅路において、転倒を恐れて歩みを止めるわけにはいきません。だからこそ、私たちは足元にある小さな紐の結び目に、もっと自覚的であるべきです。次にあなたの靴紐がほどけたとき、それはただの面倒な出来事ではなく、自分たちの体制を見直すべき絶好のアラートかもしれません。一歩を踏み出す前に、少しだけ腰を落として結び目を確認してみませんか。その小さな手間が、後の大きな飛躍を支えることになるはずですから。