先日、奥さんとシンガポールへ行ってきました。前回のnoteでは、実際に訪れた場所や旅行として感じたシンガポールの魅力について書きましたが、今回は少し視点を変えて、シンガポールという国そのものについて書いてみたいと思います。
旅行の醍醐味の1つとしてその国の事をより知れるというのもあると思います。そうする事で旅行がまた一段と楽しくなると確信しています。
僕は性格上色んな事を知るのが好きなタイプです。
あと浅く広く色んな事も知っておきたい人です。笑
旅行前にもある程度調べていましたが、実際に街を歩いてから改めて歴史を知ると、見え方がかなり変わりました。現在のシンガポールを見ると、世界中から企業や人が集まり、高層ビルが並ぶ豊かな国というイメージがあります。でも、今の姿だけを見ると分からないのが、この国がかなり厳しい状態からスタートしていることです。
そして調べていく中で面白いと思ったのが、シンガポールは「自分たちだけで強くなる」という方向ではなく、周りの国や世界とつながりながら、自分たちの存在価値をつくってきたこと。さらに、中国系、マレー系、インド系をはじめ、さまざまな人が暮らす国だからこそ、「同じ国の人間としてどうまとまるか」をかなり大切にしてきたことです。
この二つを知った時に、国づくりの話でありながら、チームづくりにもかなり通じるものがあると感じました。
小さな国だから外とつながる道を選んだ
シンガポールは1959年に自治権を獲得し、その後1963年にマレーシアへ加わりました。しかし、その期間は長くありません。政治や経済、人種をめぐる考え方の違いなどが重なり、1965年8月9日にマレーシアから分離し、独立国家として歩き始めます。
今のシンガポールを見ると「独立して成功した国」という印象がありますが、当時はかなり厳しい状況だったようです。天然資源もなく、大きな国内市場もない。失業率も高く、独立した軍隊も十分に整っていない。さらにマレーシアから分離したことで、それまで期待していた大きな市場も失いました。独立した瞬間から、「この小さな国がどうやって生き残るのか」という問題に向き合わなければならなかったわけです。
そこでシンガポールが選んだ道が面白いと思いました。国内だけで何とかしようとするのではなく、むしろ外に開いていったことです。人口も土地も資源も限られているのであれば、世界から企業や資本、人を呼び込む。自分たちだけで大きな市場を持てないのであれば、世界の市場につながる。そして地理的にも東南アジアの中心に近い場所にある強みを活かし、物流や貿易、ビジネスの拠点としての役割を高めていきました。
独立後は輸出型の工業化を進め、外国企業から資本や技術、ネットワークを取り入れていきます。その後、1967年にはシンガポール自身もASEANの創設国の一つとなりました。自分たちだけですべてを抱え込むのではなく、マレーシアやインドネシアをはじめとする東南アジア、その先の中国やインド、日本、欧米まで含めて、自分たちがその間に立つ。人が行き交い、モノが行き交い、企業や情報、お金が集まる。その中心に自分たちの役割をつくっていったのだと思います。
ここは、チームづくりでも同じなのかもしれません。自分一人ですべての能力を持つ必要はないし、一つの組織ですべてを完結させる必要もない。自分たちにないものを持っている人と組み、それぞれの強みをつなぐことで、自分たちだけではできなかったことができるようになる。
大切なのは「何を持っていないか」よりも、「今持っているものを使って、誰とどうつながるか」なのだと思います。
コミュニティを大切にした
もう一つ、シンガポールの歴史を調べていて印象に残ったのが、多民族国家としての国づくりです。シンガポールには中国系、マレー系、インド系をはじめ、異なる民族、言語、宗教、文化を持った人たちが暮らしています。
今旅行で訪れると、それ自体がシンガポールの魅力にも見えます。街を歩いていても、場所によって文化や食事、建物の雰囲気が違います。でも、この多様性は最初から自然にうまくまとまっていたわけではありません。イギリス統治時代には民族ごとに居住地域が分かれていた時期もあり、それぞれのコミュニティ同士の交流は限定的でした。さらに1960年代には深刻な人種間の緊張があり、1964年には人種暴動も起きています。
その直後に独立したシンガポールにとって、経済を成長させることと同じくらい、「違う背景を持つ人たちを一つの国としてまとめること」が重要だったのだと思います。初代首相のリー・クアンユーも、独立したその日に、シンガポールは特定の民族のための国ではなく、誰にでも居場所がある多民族国家をつくるという考え方を明確にしています。
ここで重要なのは、「違いをなくそう」としたわけではないところです。中国系の人は中国系の文化を持ち、マレー系の人はマレー系の文化を持ち、インド系の人はインド系の文化を持っている。宗教も違います。それぞれの違いを残しながら、その上に「自分たちはシンガポール人でもある」という共通点をつくっていった。
英語を共通の仕事の言語として使ったり、学校や公共住宅、コミュニティスペースなどを通して、異なる背景を持つ人同士が接点を持つ仕組みもつくられてきました。多様性があるからこそ、放っておけば自然にまとまるのではなく、つながるための環境を意識的につくってきたのだと思います。
僕はここに、コミュニティをつくる上で大事なことがあると感じました。人をまとめようとすると、全員を同じにしたくなることがあります。同じ考え方、同じ価値観、同じやり方。もちろん、最低限共有しておくものは必要です。でも、全員を同じ人にする必要はない。
むしろ違う人がいること自体が、チームの強さになることもあります。大切なのは、違いを消すことではなく、違う人たちが「それでもここでは一緒にやっていける」と思える共通点をつくることなのだと思います。国であれば、それがシンガポールという共通のアイデンティティだった。チームであれば、「何を目指しているのか」「何を大事にするのか」という共通の目的になるのだと思います。
強いチームの特徴
シンガポールについて調べて、一番自分に置き換えて考えたのはここでした。
強いチームとは、能力の高い人だけを集めることでも、似た人だけを集めることでもないのかもしれません。シンガポールは小さい国です。資源もほとんどありません。しかも、民族も宗教も文化も違う人たちが一緒に暮らしています。一見すると、国をまとめる上では難しい条件がかなり多い。
それでも、自分たちにないものは外とつながることで補い、国内では違う背景を持った人たちが共存できる仕組みをつくってきた。その積み重ねが、現在のシンガポールにつながっています。
これはチームづくりでも参考になると思っています。営業が得意な人、数字を見るのが得意な人、人と関係をつくるのが得意な人、企画を考えるのが得意な人、現場を支えることが得意な人。全員が同じことをできる必要はありません。むしろ同じタイプの人だけを集めると、得意なことも苦手なことも似てしまいます。
違う経験をしてきた人や、違う考え方を持っている人が集まるからこそ、一人では見えなかったものが見える。ただし、違う人を集めるだけではバラバラになります。だからこそ、共通の目的や、同じ方向を見るための土台が必要になる。
シンガポールが多民族国家だからこそ、コミュニティや共通のアイデンティティを意識してきたのと同じで、チームも多様になるほど、「何のために一緒にいるのか」が重要になるのだと思います。
そしてもう一つ感じたのが、自分たちだけで完結しようとしないことです。シンガポールは小さいからこそ、周辺国や世界とのつながりをつくってきました。これもチームでは同じです。今いる人だけですべてを解決する必要はない。必要であれば外の人と組む。自分たちより得意な人がいれば力を借りる。逆に自分たちが力になれることがあれば提供する。
そうやって人や情報、機会が行き来するチームの方が、長期的には強くなるのではないかと思います。
シンガポールがどう発展してきたかを知ると、「強さ」のイメージが少し変わります。大きいことが強さではない。何でも自分たちで持っていることが強さでもない。
違う人を受け入れ、共通の目的をつくり、周りとうまくつながりながら、自分たちにしかできない役割をつくる。
今回シンガポールへ行ったことで、そんなチームをつくっていきたいと改めて思いました。