安定した仕事の代表格である公務員を退職した理由
「公務員」
この言葉を聞いて、あなたは何を連想するでしょうか。
ある人は「安定」、と想像するでしょう。
またある人は「堅物」、と想像するでしょう。
世間で言う「公務員」のイメージは安定したお仕事。
わたしも公務員になるまではそう思っていました。
ここにさえ入れば、辞めさせられる心配もない。お金も自然と増えていくし、休みもたくさんある。
じゃあ、何故わたしは公務員を辞めたのか。
ちょっとお話を続けさせてくださいね。理由は大きく分けて以下の通りです。
① 頑張らなくても給料が得られる
② 残業時間や緊急対応に対するキャパシティの狭さ
③ 将来の自分が見えてしまった
④ 挑戦したいことに挑戦できない人事異動
⑤ 専門性を高めたスキルを身に付けたい
私が働いてきた公務員を辞めた理由
①成長しなくてもいい仕事になってしまうことの恐れ
公務員になってはじめての職場の上司はチームのマネジメント業務をまわすことはせず、パソコンとにらめっこ。(省エネで働いていた、とも言うかもしれない)
何の仕事をしているかもわからず、相談してもボールは返ってこない。
そんな職場に慣れることにも時間がかかり、かつ若手職員がチーム内にいないため非常に苦労したことが思い出されます。この経験で学んだのは、年齢と共に階級があがれば自然と給料が増える。仕事ができようができまいが、それは関係ないということでした。見方によれば…
という意見だってあるでしょう。この仕事をスタートした20代前半、慣れない社会人にただひたすら頑張って働いていた私にモヤモヤが生まれました。
仕事について早々に悩んだ私は「転職サイトに登録しよう!」と登録しようとしたときのこと。
自分が持っているスキルって何もないじゃないか、と気づきました。私は新卒の事務職、そんな自分が仮にこの組織からポイッて外に出されたら何も武器になるものがない。
武器がない、降参。
スキルを持たないまま何十年も働き続けていったら、
「ライフプランで退職せざるを得ないときにどうしたらいいんだ!」と焦りました。
成長しなくても給料がもらえる環境(いわゆる、ぬるま湯)で生きていくことの焦りと不安に危機感を覚えたのでした。
②残業時間や緊急対応に対するキャパシティの狭さ
「残業時間はどれくらいなのか」という質問はよく聞かれます。
私からは「部署による」というお答えしかできませんが、実際に私が所属した部署は繁忙期を除くと定時で帰っていく職員が多かったです。
しかし他の部署は違って、不夜城のようにずっと電気がついている部署もあります。
今は行政機関でも残業時間に対する規制が厳しくなったので帰らざるを得ない部分もありますが、タスク量の多さや人手不足により時間内では対応しきれない場合もあります。
また、行政機関において24時間稼働することが必要な緊急性の高い部門(例:災害、人の生死にかかわること等)では夜間や休日出勤もあります。
私はこの部分に対するキャパシティが非常に狭かったことに働いてから気づかされました。
実際に緊急性の高い案件を扱う部署に所属したときのこと。
公用携帯を持ったまま休日を過ごさなければいけない、となったときに自分の緊張と不安が強まることに気づきました。”慣れ”とは言うものの、何度やってもこの業務だけは心身にきつかったのです。
残業時間が常態的に多い部署、緊急性の高い案件にともなう夜間や休日出勤のある部署に異動することによる自分の心身の負担は大きいのではないかと考えるようになりました。自分が健康的に良い緊張感とリラックスを保って働ける場所はどこなのだろうか、と悩んだのです。
③将来の自分が見えてしまった
公務員になりたての頃、「頑張るぞ!」という意気込みが強くありました。
しかし、その目には組織のピラミッドがくっきりと映りこむこととなるのです。管理職の顔を気にする職員、無茶ぶりをする管理職の対応に慌てて動く職員や議会対応で夜遅くまで頭を悩ませる職員。トップダウンだからこそ下位になればなるほど振り回されている現状を目の当たりにしました。
私も数十年後には今の目の前にいる上席のように管理職に対して顔色伺ったり、議会対応や全体の調整役で時間を取られるのかと。
これが私の何十年後の姿なのか、
と考えたときに「自分の将来は目の前にいる上席のようなキャリアではないんじゃないか」と思ったのでした。
④挑戦したいことに挑戦できない人事異動の仕組み
専門的な知識を持たない私は業務の中で様々な仕事に携わりました。そのなかでもやりたいことが見つかって「この業務に挑戦したい!」と思い、人事異動の希望を書きました。
でも、その希望は通りません。
何度も異動を希望したとて、叶いませんでした。人事異動とはいうものの大きな組織で自分の希望が通るのはごく僅か。挑戦したくても挑戦できるステージを用意してもらえる可能性は低いのです。(例えば、自己研鑽で分野に特化したスキルを取得したりすれば別かもしれません)
そして、自分が望まない部署や適性に合っていない部署に異動になってもすぐに異動は叶いません。私にとって人事異動はパズルを組み替える作業に近いような感覚を持ちました。
UFOキャッチャーで移動しているような感覚
「毎回の人事異動で自分の人生を任せても大丈夫なのだろうか」
人事異動はあって当たり前、と腑に落とせる人もいる中で私はそうではなかった。ましてや、やりたい業務が見つかって希望の部署に属してもまた数年後には人事異動がやってくる。特化したスキルを長い目で成長させて活かせる環境には相応しくないと思いました。
⑤専門性を高めたスキルを身に付けたい
ここまで退職に至る理由について書いてきました。
私は民間経験がないため、民間との比較ができません。しかし、公務員独特の風土や文化はあるんじゃないかと思っています。
④にも記述の通り、私は自分が書いた文章を発信する力を手に入れたいと思ってきました。しかし、どうしても地方公務員という仕事では専門性には達することができないと考えました。自己研鑽のなかで勉強することも考えましたが、人生の大半を占める仕事において自分なりの次の夢をもちながら仕事をすることも悪くないのではと思ったのです。自分が武器にしたいスキルを身に付けて活躍するため、私は公務員を退職しました。
慎重派でなかなか行動できない私の一大決心。
自分でも本当に退職するなんて思ってもいなかった。辞めようと考えて退職するまでに3年以上は費やしました。年単位で悩むものだと思います。
今回、こうやって一歩踏み出した。
不安もあるけども、自分の人生を自分の選択で生きていきたい。
こうありたい、という理想を持ちながら日々模索をしているような状況です。