WEBディレクター森下景一の仕事術
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WEBディレクターの森下景一です。デザイン領域と並行して、最近はディレクションを担当することも増えてきました。
Web業界は、リモートワークや外注パートナーの活用が多い分野です。対面で会わずとも進行できる案件が多く、距離や時間に縛られない働き方が可能になった一方で、「仕事相手とどうやって人と人との関りを持つのか」という点は難易度が増しています。
私、森下景一もウェブディレクターとして数々のプロジェクトを経験するなかで、自分が手を動かすこと以上に、周りにいかに気持ちよく動いてもらうかが仕事では重要だと痛感してきました。本記事では、そのために意識している考え方や工夫をお伝えします。
1. 指示ではなく設計図を渡す
リモート環境では、現場でちょっとした補足ができません。だからこそ、指示は作業指示ではなく全体設計を示すことが重要です。
例えばデザイナーに「このページを作ってください」と依頼するだけでは、判断基準が伝わらず修正が多発します。しかし、「今回のターゲットは20代女性、ゴールは会員登録。だから第一ビューは安心感を重視して欲しい」という設計図を共有すれば、相手は自律的に最適な提案をしてくれます。
部下や外注パートナーが自分ごととして考えられる材料を渡す。これがディレクターに求められる最初のスキルです。
2. 成果ではなく過程を可視化する
リモートワークでは「ちゃんと進んでいるのか」が見えにくいのが大きな課題です。私はその解消のために、成果物だけでなく過程の共有を必須としています。
・タスク管理ツールで進捗を「見える化」
・日次または週次の報告をフォーマット化
・ワイヤーフレームやラフ案の段階で早めにレビュー
この仕組みによって、メンバーは「成果を出す前に途中経過を見せていい」という心理的安心感を得られ、修正の手戻りも最小限で済みます。
3. 評価はスピードより再現性
ウェブディレクターが陥りがちなのは、早く仕上げてくれた人を評価してしまうことです。しかしリモート環境では、安定して一定の品質を保てる再現性のほうが価値があります。
外注先や若手に対しても「今回の成功を次の案件で再現できるか?」を基準にフィードバックを与えるようにしています。再現性を意識させることで、短期的なスピード勝負ではなく、長期的に信頼できるチームが育っていくのです。
4. 心理的安全性を設計する
リモートチームが動かなくなる最大の理由は「言いづらさ」です。質問したら迷惑かな、報告が遅れたら怒られるかな――そう思わせてしまうと、メンバーは手を止めてしまいます。
そこで私はあえて雑談の時間を設けたり、オンライン会議の冒頭で「今週は何か困ってることある?」と軽く投げかけたりしています。これだけで「言っていいんだ」という雰囲気が生まれ、情報共有が格段にスムーズになります。
心理的安全性を設計することもまた、ディレクターの役割です。
5. 「任せる」と「放置する」は違う
外注や部下にタスクを渡すとき、よく勘違いされるのが「完全に任せてしまう=放置」になってしまうことです。
任せるとはゴールと枠組みを明確にしたうえで、裁量を与えること。放置は丸投げして後で結果だけ見ること。この違いを意識しなければ、チームは混乱し、結局ディレクター自身が火消し役になります。
私はいつも「どこまでが任せる範囲か」を明示し、境界線の外側にあるものは必ずチェックするようにしています。これで安心感と自律性の両立が可能になります。
6. フィードバックはタイミングが命
良い成果を生むチームは、必ずフィードバックのリズムが整っています。完成してからまとめて指摘すると、相手は萎えてしまいますし、修正コストも膨らみます。
私は「小さく早く褒めて、早めに方向修正」を徹底しています。細かい改善でも即座に感謝を伝えることで相手のモチベーションを保ちつつ、大きな修正は初期段階で行う。このリズムが、部下を動き続けるチームに変えてくれます。
7. ディレクターは旗を振る人である
ウェブディレクターの本質は、作業を取り仕切る人ではなく、旗を振って方向を示す人だと考えています。リモートや外注を前提とした時代だからこそ、「何を目指すのか」をチームに常に見せ続けることが欠かせません。
旗が見えれば、人は安心して動けます。旗が揺らげば、人は立ち止まります。自分が旗を持つという覚悟こそ、部下に気持ちよく動いてもらうための最大の仕事術です。
まとめ
リモートや外注が当たり前になったWeb業界において、ウェブディレクターに求められるのは「自分が全部やる」ことではありません。大切なのは、部下や外注が主体的に動ける環境を設計し、継続的に成果を出せるチームを作ることです。
①指示ではなく設計図を渡す
②過程を可視化する
③再現性を重視する
④心理的安全性を守る
⑤任せると放置を混同しない
⑥フィードバックのリズムを作る
⑦旗を振り続ける
この7つのポイントを意識することで、対面ではなくても部下は驚くほど力を発揮してくれます。ディレクターの腕次第で、チームは強くも脆くもなる。だからこそ私は、これからも「人が動きたくなる環境」をデザインし続けていきたいと思います。