きつかったけど、それ以上の経験ができたアルバイト
「お金をいただく本当の意味」
高校生の頃から、私は部活動と並行してアルバイトに明け暮れていました。レストラン、カラオケ、コンビニ、コールセンター、芸能スカウト、ごみ収集、引越し、グラフィックデザインなど、さまざまな職種を経験しましたが、どれも長続きせず、働くことの意義を見出せずにいました。
そんな中、渋谷にある小さなバーでアルバイトを始めることになりました。「新しいことに挑戦してみたい」という軽い気持ちが動機でしたが、その現場は私がこれまでに経験したどの仕事とも違うものでした。お客様と直接接し、楽しいひとときを提供することが求められるこの仕事では、毎日が試練の連続でした。何をしても「面白くない」「向いていない」と言われ、自信を失いかけていました。
そんなある日、ひとりのお客様との出会いが私の考え方を大きく変えました。その方は、私の何気ない一言やさりげない行動を楽しんでくれたのです。その瞬間、「自分が楽しむことで、相手も楽しむ」というシンプルで重要な真実に気づきました。それまでの私は、ただ仕事をこなすことに必死で、楽しむ余裕を持てていなかったのです。
その気づきから、私は「どうすればお客様がもっと楽しめるか」を真剣に考えるようになりました。お客様の好みをメモしたり、カラオケの練習をしたり、お酒を注ぐタイミングや会話の間合いを研究したりしました。それまでのどの仕事よりも真剣に向き合った結果、「君に会いたい」と言ってくださるお客様が増え、仕事が楽しいと感じられるようになりました。
ある日、オーナーから「お客様が店にお金を払う本当の理由は何だと思う?」と問われました。初めは「商品の価格が設定されているから」と答えましたが、オーナーはこう言いました。「お客様が支払うのは、満足感という価値に対する対価なんだ」と。この言葉に、私はハッとさせられました。
満足感を提供することこそが、働く上での本質であり、この経験は私の価値観を大きく変えました。「楽しむ心」が他者にも伝播し、結果として自分自身も楽しくなる。そのプロセスを通じて得られた学びは、今でも私の働く上での基盤となっています。