「脚立は登れますか?」
麻美子は、明子に質問した。
「はい、ロープはよく結び方がわからなかったけど、脚立は登れます」
明子は、船台に立て掛けてある脚立をするすると登った。
「ロープの結び方はわからなかったんだ」
麻美子は、さっき男の子の生徒にバカじゃないのって言われていた時のことを思い出していた。
「ねえ、ロープの結び方を覚えたい?」
麻美子は、明子の後に続いて脚立を登りながら、明子に質問した。
「覚えたい?」
「はい、覚えます!」
明子は、麻美子に大きな声で返事した。
「それじゃ、後でお姉さんと一緒にロープを結んでみようか」
「はい!」
明子は、麻美子に言われて嬉しそうに笑顔で返事していた。
先に脚立を登っていった香代がキャビンの出入り口の扉を開けて船内へ入った。
「香代ちゃんのように、中へ入っていいわよ」
麻美子は、明子に案内した。
「これから松下さんと一緒にヨット乗る仲間がいっぱいいるから」
明子は、香代の入った出入り口から船内へ入った。
「お、こんにちは」
隆が、新しく船内に入って来た明子に声をかけた。
「あ、先生ですか?よろしくお願いします」
明子は、隆の顔を見ると、安心したように挨拶をした。
「先生?」
先生と呼ばれて、隆はちょっとちょっとキョトンとしていた。
「先生じゃなくて、隆って呼んでいいわよ」
麻美子が明子に言った。
「隆?隆先生・・」
「そうね、隆先生」
麻美子は、笑顔で明子に返事していた。
「彼女は、松下さんっていいます」
麻美子は、船内にいるラッコのメンバー皆に明子のことを紹介した。
「松下さんっていうんだ」
瑠璃子が言った。
「松下なにさん?」
メンバーたちのことを名字でなく名前で呼んでいる隆が明子に聞いた。
「松下明子さんよね」
麻美子が、明子の代わりに答えた。
「明子さんか。よろしく」
隆は、明子に挨拶した。
「そうだ!瑠璃ちゃん、明子ちゃんにロープの結び方を教えてあげてよ」
麻美子が、瑠璃子に頼んだ。
「いいよ。うまく結べなかったの?」
瑠璃子は、明子に聞いた。
「とりあえず、瑠璃子の横に座って、結び方を教えてもらいな」
隆が、明子のことを瑠璃子の横に座らせた。
「このロープって明子ちゃんの?」
「うん」
明子は、瑠璃子に頷いた。
「なんか懐かしい!私たちも、1年前にヨット教室から同じようなロープをもらって、結び方を習ったよね。麻美ちゃんにも教えてもらったっけ」
「そうだよね、あの頃はぜんぜん結べなかったんだよ」
陽子が瑠璃子に言った。
「ここをね、そうそう、こうやって上から通して結ぶんだよ」
瑠璃子は、隣に座っている明子の手取り足取りで優しく結び方を教えていた。
「そうそう、右から通すのよ」
反対側に腰掛けている陽子も、明子に教えていた。
麻美子は、2人が明子に教えている姿を眺めながら、うちのヨットの子たちは皆、さっきの男の子と違って根気強く優しく教えてくれて嬉しかった。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
東京国際ボートショー開催中の横浜マリーナではクルージングヨット教室生徒募集中!