クルージングヨット教室物語207
Photo by Shiho Azuma on Unsplash
「香代ちゃん、こっちに来てテーブルで落ち着いてパスタを食べなよ」
香織は、ラットを握っている香代に言った。
「私がマリーナに着くまでラットをやっているから」
「え、大丈夫だよ」
香代が香織に返事した。
「うん、そう思う。香代ちゃんの方がラットの操船上手だとは思うけど、でも私にやらせて」
香織が香代に言った。
「香代ちゃん、ラットを握って操船するの好きなのよね。だから、ずっと握っていたいのよ」
麻美子が香織に言った。
「でも、隆さんにラットを持つように私が言われたし」
「ああ、そうね。さっき言っておいたわね。大丈夫よ、隆には持っていたって伝えておくから」
麻美子が香織に言った。
「うん。でも、私が持ちたい」
香織が麻美子に言った。
「自分で持って、少しラットの操船を練習しておかないと、隆さんから次に乗った時、いつまで経っても上達しないなって怒られてしまうし」
「そうだね」
そう言うと、香代はラットを香織に手渡した。
「良いの?ラットを持っていたかったんじゃないの?」
「ううん、大丈夫。お腹も空いたし」
香代は、パスタのお皿を手に持つと、麻美子の膝に腰掛けて食べ始めた。
「香織ちゃんの後、雪ちゃんも少しラットを握っておいた方が良くない」
麻美子は、膝の上の香代の頭を撫でてあげながら、雪にも言った。
「ほら、私はさ。隆の頭の中でヨットのことを覚える気ないってわかっているだろうけど」
麻美子は、雪に言った。
「他の人たちには皆、ヨットのこと覚えさせようと思っているだろうし」
「そうね」
雪は、苦手なラットは出来るなら操船したくなさそうに思いながら答えていた。
「私がさ、ラットを握ると船が明らかにジグザグ蛇行しながら走るんだよね」
「そうならないように練習するんだけど」
麻美子の膝の上に座っている香代が答えた。
「それはそうだ!」
麻美子は、香代の言葉に頷いていた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
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