クルージングヨット教室物語197
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「それじゃ、本番の動物たちに会いに行きましょうか」
麻美子が汽車から降りると、皆に言った。
さすがにマザー牧場の遊園地、アトラクションはどれも子供っぽいものばかりなので、大人の皆には楽しめるようなものが無かった。
「そうだね。せっかく牧場に来たんだしね」
皆は、動物たちのいるエリアに移動した。
他にも、ウサギや羊などいろいろな動物がいるのだが、まずはメインの乳牛たちのところへ向かう。
「乳業ばかりかと思ったら、オスの数もけっこういるんだな」
「それは、必ずメスばかり生まれるわけじゃないからね」
麻美子が隆に言った。
「オスで生まれた子牛たちは、子供の頃はお母さんと一緒にここで過ごせるけど、やっぱり大人になったら、どこか牛肉の施設に売られてしまうのかな」
隆が呟いた。
「そんなわけないでしょう。大人のオスだって、いっぱい木陰で休んでいるじゃないの」
麻美子が隆に言った。
「種牛だけ残して、後は・・」
「昨日、私たちが食べた中華の一部になっていたりして・・」
「そうかもな」
隆の言葉に陽子が話した。
「そんなことあるわけないわよ」
「麻美子がそう思いたいのはわかるけど、マザー牧場だってビジネスだから」
隆が言うと、
「こう言う子供たちの夢のある施設で、そんなこと言わないの」
隆は、麻美子に頭を優しくぶたれていた。
「アイスクリームを食べに行こうよ」
牛たちが放牧されている高原の中に、木でできた掘っ建て小屋が建っていた。小屋の前には、テーブルや椅子が並べられていて、アイスクリームや牛乳が飲めるようになっていた。
小屋の中のお店で、ソフトクリームや牛乳を買うと、表のテーブルで飲んでいた。
「本当に春らしい天気だな」
天気は晴れで、ポカポカした春らしい春分の日のお休みだった。
「海が見えるよ」
香織がマザー牧場の丘の上から見下ろしながら言った。
「あそこが観音崎だね」
「あっちの奥の方が横浜かな」
皆は、マザー牧場から見える海を眺めていた。
「あれ、ヨットじゃない」
保田の漁港方面を目指して、房総にやってくる白い帆のヨットがあった。
「マッキーだ」
視力2.0の香代が叫んだ。
「え、香代はよく見えるな」
隆が言った。
「私なんて、白いヨットがボワーンって海の上の移動しているようなのしか見えない」
麻美子が言った。
「マッキー来ているんだ」
「香代ちゃんの見間違いかもしれないよ」
香織が言った。
「後で、港に戻ったら見間違いかどうか確認しよう」
隆は、香織に答えた。
マッキーは、横浜のマリーナでアクエリアスの隣の海上に停泊しているヨットだった。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など
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