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クルージングヨット教室物語166

Photo by Tunafish on Unsplash

「で、春のクルージングには、いつ行く?」

中村さんが、隆に聞いた。

「え、春のクルージングですか?」

「この前、そろそろ暖かくなってきたし、どっかに1泊してくるって話をしていただろう」

「ああ、そうでしたね」

隆は、中村さんに答えた。

「どうする?いつ行くか」

隆は、周りにいたらっこの皆に聞き返した。

「そうね、三連休とかが良いでしょう。春分の日とかぐらいしかないんじゃない」

陽子が、隆に答えた。

「それじゃ、春分の日に行こうか」

隆は、皆に答えつつ、中村さんにも話していた。

「春分の日な、わかった。それまでに、アクエリアスの船底を塗り直しておくわ」

中村さんは、隆に答えた。

隆たちのラッコは、いつも使わない時は船台に載せて、横浜のマリーナ敷地内の陸上に保管しているが、中村さんのアクエリアスは、海上に浮かべたままで保管していた。

海上にずっと浮かべたままだと、船の底に貝とか藤壺がくっついてしまうのだ。そのために、浮かべっぱなしのヨットは、だいたい年に1回ぐらいヨットを陸上に上げて、船底を掃除して、船底塗料を塗り直しているのだった。

船底塗料には、貝や藤壺が嫌う素材が混ざっていて、船底に近寄りづらくなるのだ。

「中村さん、どうせ船底掃除するのなら、ベイサイドマリーナでしませんか」

隆が、中村さんに聞いた。

「やだよ。ベイサイドマリーナなんかで上架したら料金高いだろう」

「そうか、でも1回ぐらいあそこで上げてみたくないですか」

「あ、そうだね。最新のクレーンだものね」

中村さんが、隆に返事した。

「今度、うちのラッコをあそこで上架してみようか」

「何のために?」

隆に言われて、陽子が逆に聞き返した。

「クレーンの試乗調査」

隆が、笑顔で陽子に返事した。

「そうだよ、そういうのは儲かっている会社の社長さんのヨットで上げないとな」

中村さんが、隆に言った。

「じゃ、今度ラッコを上げてみますか」

「誰が、儲かっている社長さんなのよ」

麻美子が、隆の頭を小突いていた。


作家プロフィール

主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」「文筆のフリーラン」「魔法の糸と夢のステッチ」など

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