「湖に行くんじゃないの?」
車を運転しているお父さんは、山中湖の湖畔に着くと、湖畔の道路を走り抜けて、山の中に入って行った。
「もう午後もかなり過ぎてしまったから、湖でヨットに乗るのは明日にして、今夜泊まるキャンプ場に行こう」
お父さんは、洋ちゃんに答えた。
キャンプ場に到着すると、お父さんは車を今日泊まるサイトに停めて、後ろのバックドアを開けると、テントを取り出して、車の脇に手際よくテントを組み立てていた。
けっこう大きなサイズのテントで、家族3人が余裕で泊まれる大きさがあった。
「今夜は、飯ごうを炊いてカレーにしような」
お父さんは、手際よくお米を飯ごうで炊いて、カレーを作り始めていた。
「お父さんって、キャンプとか得意なんだね」
洋ちゃんは、お父さんの手際の良さに驚いていた。普段は、朝、会社に出かけてしまって、会社から帰ってくるのも、夜遅かったから、お父さんのこういう姿を見るのは初めてだった。
お父さんが手際よく進めているので、普段、家で食事の料理をしているお母さんは、特に何も手伝うことなく、テントの前に設置された折りたたみの椅子に腰掛けてのんびりしていた。
「お母さん、パンツにちょっと着替えてくるわね」
お母さんは、着替えるためにテントの中に入った。
「キャンプに行くのに、なんでスカートで来たの?」
「お母さんだって、まさかキャンプするとは思っていなかったのよ。ちゃんとどこかホテルでなくても民宿に泊まるものと思っていたから」
「そうなんだ」
お母さんは、テントの中に入ると、中でスカートを脱いでパンツに着替えてきた。
「洋ちゃん、こっちに来て、飯ごう炊くの手伝いなさい」
お父さんに言われて、キャンプ場の炊飯場所でお米を炊いているお父さんを手伝った。
出来上がった夕食のカレーライスを食べ終えると、テントの中に寝袋を敷いて寝ることになる。
「ここに寝袋を並べて、皆で寝よう」
お父さんは、寝袋の準備をしながら、家族皆に話した。
「なんかベッドではないけど、寝袋を敷く台みたいのは無いんですか?」
お母さんは、お父さんに聞いた。
「そういうのは特にないな」
テントの床に寝袋を並べながら、お父さんは答えた。
「そこって、殆ど地面じゃないですか」
「地面ではないよ。ちゃんとテントの床があるし」
お父さんは、お母さんに言った。
「地面のゴツゴツで痛くならないですか」
お母さんは、テントの床に寝るのが不安そうだった。
「だから、寝袋の中に毛布を何枚か敷いてあるんだけど」
「私、車の床をフラットにして、車で寝ようかしら」
お父さんに言われても、テントの中で寝ることには躊躇しているお母さんだった。
「車で寝るか?」
頷くお母さんに、1個寝袋を持って、車に行くと、後部座席をフラットにして毛布などを敷くと、お母さんが寝やすいように、お父さんは車に寝床を作っていた。
「俺も、車で寝たいな」
車の中に出来上がった寝床を見た洋ちゃんは、お父さんに言った。結局、テントを立てたものの家族3人は、車の中に寝袋を敷いて寝ることになってしまった。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
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