ジュニアヨット教室物語22
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「やっと皆が来たね」
洋ちゃんは、健ちゃんに言った。
「ようやく乗るヨットが決まったのかな」
先に、沖合いに来ていた洋ちゃん健ちゃんのヨットと数艇にかなり遅れて、他のヨットもやって来た。
「じゃ、ヨットレースを始めるよ!」
遅れてやって来たヨットと一緒に来た先生たちの乗っているボートから皆に声がかかった。
ピー!
「これがレーススタートの10分前の号令」
片桐先生は、ボートの上で笛を吹きながら、皆に告げた。
ピー!
「それで、これが5分前の号令!」
片桐先生は、2回目の笛を吹いてみせた。
ピー!
「そして、これがスタートの合図、これが鳴ったら、スタートなので、向こうにあるブイを周って帰って来て下さい」
片桐先生は、皆に説明した。
「ね、10分前と5分前の号令って何か違うの?」
「10分も5分も、スタートの笛も皆同じに聞こえたけど」
洋ちゃんと健ちゃんは、片桐先生の笛を聞きながら話していた。
ボートの上での片桐一郎は、10分前を少し短め、スタートを長めに吹いているつもりだったが、海上から聞いている洋ちゃんや健ちゃん、生徒たちには、全部同じに聞こえていた。
「まあ、いいよ。1回目の笛が10分前、2回目が5分で3回目でスタートって覚えましょう」
健ちゃんは、舵を握っている洋ちゃんに言った。
「どれが何回目だったか忘れてしまいそう」
「大丈夫です、洋ちゃんは舵を取っていて下さい。僕が数えておきます」
メインシートを握っている健ちゃんが、洋ちゃんに言った。
「え、何?今の5分前の笛か?」
案の定、他のヨットの子たちも、今の笛が何回めの笛かどうかわからなくなっているようだった。
「5分前です!」
そんな中、健ちゃんがちゃんと笛の数を数えてくれていたおかげで、洋ちゃんだけは、しっかり今が何分前かを把握して、ヨットを走らせられていた。
「スタートです!」
スタートの笛が鳴ると、健ちゃんは、洋ちゃんに伝えた。
「今の笛は何分前?何分前?」
多くのヨットが、スタートラインから遥かに離れたところを走りながら話しているのに対して、洋ちゃんの操船しているヨットだけは、ジャストでスタートラインからスタートしていた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
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