「はーい、皆!1時半だから集まって!」
片桐一郎は、お昼で横浜マリーナの敷地内をあっちこっち飛び回り、走り回っていた子供たちをクラブハウスに集めた。
「午前中、皆がヨットに乗っているところをボートの上から見させてもらいました」
片桐一郎は、子供たちに話し始めた。
「初めのうちは、よくわからずに操船していた皆さんも、だいぶ後半はわかってきたようですね」
片桐一郎は、子供たちの飲み込みの早さに心底驚き、褒めていた。
「これから午後も、午前中乗っていた場所に行き、またヨットに乗るのですが・・」
片桐一郎は、皆の顔をぐるっと眺めた。
「また同じように、ブイの周りをぐるぐる回っているだけでは進歩がないので、午後はヨットレースをしてみたいと思います」
片桐一郎は、子供たちに提案した。
「ヨットレースだってよ」
「レースってことは競争するのか?」
生徒たちは、片桐一郎の提案を聞いて、口々に喋り始めた。
「はい、先生!ヨットレースってどうやるんですか?」
生徒の遠藤が手を上げて、片桐一郎に質問した。
「ヨットレースは、ブイと付き添いのボートの間をスタートラインに見立てて、スタートの号砲と同時に、スタートラインを越えて、風上側にあるブイまで行って、そのブイを周ってまた戻ってきます。戻ってきたら、今度はスタートラインがゴールラインに変わりますので、ゴールラインを越えるとゴールになります。一番最初にゴールできたヨットが優勝です、逆に最後にゴールしたヨットはビリです」
片桐一郎は、皆に簡潔に説明した。
「本当は、スタートして風上のブイへ行きまわったら、次はサイドにもブイがあって、そのサイドのブイを周って、スタートラインに戻ってきたら、スタートラインだったブイを周って、もう一度風上のブイまで行って周ったら、スタートラインまで戻って、ゴールなのですが」
最初に簡潔に説明した内容を少し複雑に付け加えた。
「これが、ヨットレースのオリンピックルールなのですが、こんな複雑なコースをいきなり午後から周ってきてと言っても、皆さんだって戸惑ってしまうことでしょうから、今日の午後は、スタートラインを越えたら、風上側のブイを周って、戻ってきたらゴールにしましょう」
片桐一郎は、本日午後に開催するヨットレースだけの特別ルールを作った。
「ただし、ヨットレースには、ヨット同士が一緒に走る際のポートスターボードとか風上艇が避けるとかという安全上のルールがいくつかあります。このルールだけは、きちんと守ってレースしましょう」
片桐一郎は、皆に命じた。
「はい、ヨットレースのルールってなんですか?」
「ポートスターボードって何のことですか」
生徒たちは、片桐一郎に聞き返した。
「はい、黙れ黙って、静かに。これから先生が説明するだろうが」
勝手にお喋りし始めた生徒たちに注意したのは、片桐一郎の息子だった。片桐一郎の息子も、今年から始まった横浜マリーナのジュニアヨット教室の生徒の1人だった。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
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