ジュニアヨット教室物語8
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「ようやく着いたね」
「本当だよ。まったく大冒険だったね」
駅からマリーナの前までたどり着いて、洋ちゃんたちは話していた。
「もう一生、ヨットハーバーまで着けないんじゃないかと思ったよ」
健ちゃんは、洋ちゃんに苦笑しながら話していた。
「ね、本当だよね」
洋ちゃんは返事しながら、マリーナのゲートをくぐって中へ入った。
「プールがあるじゃん」
「本当だ!」
2人は、マリーナを入ってすぐのところに水の入っていないプールがあったのを見つけた。プールの周りには、マリーナをぐるっと囲む感じでヤシの木が植わって、マリーナっぽくなっていた。
「水が入っていないね」
洋ちゃんは、水が入っていないプールの中に飛び降りながら、健ちゃんに言った。
「きっと夏になったら、水が入って泳げるようになるじゃないの」
プールの脇を歩いていた健ちゃんが、中にいる洋ちゃんに向かって答えた。
「ヨットがいっぱいあるじゃん!」
プールから海の方を眺めると、大きなヨットがたくさん浮かんでいるのが見えて、洋ちゃんは叫んだ。
「それは、ヨットハーバーですからね」
「どのヨットに、うちらは乗るのだと思う?」
洋ちゃんは、プールの外に出て、海際まで走って行くと、健ちゃんの方を振り返って聞いた。
「どのヨットに乗るんでしょうね」
健ちゃんも海際まで歩いてくると、洋ちゃんの横に立って、海を眺めていた。
「あっちの方にある薄汚れたヨットよりは、こっちの方にある白い綺麗なヨットに乗りたいな」
健ちゃんは言った。
「確かに、俺も、あっちの白い綺麗な方のヨットに乗りたい」
洋ちゃんも健ちゃんに話していた。
2人は、ぜんぜん知らずに勝手な感想を述べていたが、まさか今、自分たちが指差したあっちの方にある薄汚れたヨットが、これから自分たちにヨットを教えてくれることになる先生のヨットだとは思いもしなかった。
八郎丸は、マリーナ沖の海上で揺れていた。
「本当、どのヨットに俺らは乗るんだろうね」
「あっちから1艇、こっちに向かって来るじゃないですか。もしかしたら、あのヨットなのかもしれないですね。ヨット教室で使うから、こっちに移動しているのかも」
「確かに、そうなのかもしれないな」
こちらにやって来るヨットは、2人が乗りたいと言っていた白い綺麗なヨットではなかった。
2人がお喋りをしていると、自分たちと同じぐらいの少年少女が何人か集まってきていた。
「彼らも、ヨット教室の生徒なのかな」
「そうかもしれないね」
洋ちゃんと健ちゃんは、同い年ぐらいの少年少女が集まってきたのを見ながら、お喋りをしていたが、まだ同じヨット教室の生徒かもわからないし、知らない子供達なので声をかけられずにいた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
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