「洋ちゃんー!」
日曜の朝、ベランダ側の門から幼馴染みの健ちゃんが呼んでいた。
「はーい!」
洋ちゃんのお母さんが、ベランダの表にいる健ちゃんに返事した。
「おはようございます」
「健ちゃん、おはよう。洋ちゃんも今、出てくると思うからちょっと待ってね」
洋ちゃんのお母さんは、健ちゃんに声をかけた。
「洋ちゃんー!何をやっているの!?健ちゃん待っているわよ」
洋ちゃんのお母さんは、家の中にいる洋ちゃんのことを呼んだ。
洋ちゃんは、7階建てのマンションの1階の部屋だった。2階から上の部屋は、普通の細いバルコニーがベランダ側に付いていたが、1階の部屋だけは、ちょっとしたお庭と1台分の車が置ける駐車スペースが付いていた。
「黒ちゃん」
健ちゃんは、洋ちゃんの家の駐車場に停まっている車の下から顔を出している真っ黒のウサギに向かって、声をかけた。
ウサギの黒は、庭に置かれている青いプラスチック製の野菜箱の中を寝ぐらにしていて、鎖に繋がれており、よく車の下に潜り込んだりして過ごしていた。
「ごめんごめん、お待たせ」
洋ちゃんが、バッグを抱えて、ベランダ側の出入り口から出てくると、スニーカーを履いて表に出た。
「黒ちゃんって、人に慣れていて可愛いですよね」
「そうだね」
「お散歩とか行くんですか?」
「黒のお散歩?お散歩は、ウサギは行かないかな、ってかお散歩は無理でしょう」
「そうなんですね」
健ちゃんは、黒の頭を撫でてあげながら、洋ちゃんに答えた。
「行ってきます!」
「はい、気をつけて行ってらっしゃい」
お母さんは、自分の息子と健ちゃんを見送っていた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
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