クルージングヨット教室物語148
Photo by Sarmat Batagov on Unsplash
「瑠璃ちゃん、おはよう」
「おはようございます」
瑠璃子は、麻美子の運転するエスティマの後部座席に腰掛けながら挨拶した。
「なんかさ、話をしていたら、瑠璃ちゃんの家って、ちょうど私たちが横浜のマリーナに行く時、高速を降りたところからすぐに住んでいることがわかって・・」
麻美子は、助手席の隆に説明していた。
「そうなんだ。それでマリーナに行く前に立ち寄ったんだ」
「そういうこと」
麻美子は運転しながら、隆に答えた。
「そういえば、雪の家もちょうど通り道じゃないの」
「雪ちゃんの家は、通り道というかマリーナのすぐ近くってだけじゃない」
麻美子が言った。
「通り道っていえば、陽子ちゃんの家も割とこの道沿いに近いよね」
瑠璃子が、隆に言った。
「まあ、確かにそうかもね」
「いっそのこと、マリーナに行く前に、皆の家に立ち寄って拾って行く」
「それじゃ、スクールバスだよ」
隆は、麻美子のアイデアに笑っていた。
「でも、バスでも良い気もするけどな」
隆は付け加えた。
「だって、そのために赤いクーペをエスティマに買い替えたんだろう」
「そうね」
麻美子は、隆に言われて、昔、クルージングヨット教室が始まったばかりの頃、皆がラッコに乗るようになった頃のことを思い返していた。
「あの時、隆に赤いクーペをエスティマに買い換えようと提案した時、意外に隆ってぐずらなかったよね」
「ぐずるって、赤ん坊じゃないんだから」
「もっt赤いクーペに拘りがあるのかと思っていた」
「車なんて、大して興味ないから、乗れればなんだって良いんだよ」
隆は、麻美子に答えた。
「おはよう!」
隆たちは、マリーナのクラブハウスに入ると、既に先に来ていた香織たちに挨拶した。
「今日も寒いね」
「肉まんが食べたくなるよね」
瑠璃子が、陽子に言った。
「やだ、香織ちゃんと同じこと言っている」
「私も、さっきあんまんが食べたくなるって言ったの」
ラッコのメンバーがクラブハウスで雑談していると、
「なんか呼んだ?」
松浦さんたちヨットオーナーたちが話に加わって来た。
「特に呼んでないよ」
と言いながらも、横浜のマリーナにヨットを保管しているオーナーさんたち皆で、ラッコに一緒に乗って海へと出ていた。
もし、横浜のマリーナに流行語大賞があったのならば、この冬の横浜のマリーナでは「呼んだ」が間違いなく流行語大賞にノミネートされていたことであろう。
寒くて誰も乗りに来なくて、自分の船には他に一緒に乗る相手がいなくても、とりあえずマリーナに出かけて行って、そこで出航しようとしているヨットを見つけたら、
「呼んだ」
って声を掛ければ、一緒に出航できるのが横浜のマリーナのメリットだった。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
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