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クルージングヨット教室物語141

Photo by David Becker on Unsplash

「香代ちゃん、セイルは?上げる?」

麻美子は、今日はずっとおとなしくラットを握っている香代に声をかけた。

「いつでも上げられるよ!」

陽子や香織も、セイルを上げる準備を終えて待機していた。

「私も、金曜日の会社のお昼は、蕎麦を食べたよ」

「緑か赤どっちの蕎麦にしたの?」

「カップ麺じゃないよ。ちゃんとしたお蕎麦屋の定食だよ」

「そうか、お弁当じゃなく豪華な昼食べているな」

「一応、丸の内OLだからね」

瑠璃子は、市毛さんと大きな声で雑談していた。

「ラッコの子たちは皆、元気な子が多いのに、彼女は静かなんだね」

松浦さんが、おとなしい香代のことを麻美子に話した。

「ええ、普段はもう少し元気いいんだけど、人見知りなの」

「え、ヨットで人見知りなのか」

「でも、可愛くてとっても良い子なのよ」

麻美子は、香代のことを愛おしそうに話していた。

「セイルを上げたい」

香代は、麻美子に伝えた。

「よし、じゃあ、セイルを上げようか」

マスト脇のウインチの側にいた麻美子よりも先に、松浦さんと阿古さんがウインチハンドルを掴むと、シートを引いてあっという間にセイルを上げてしまった。

「すごい!楽だわ」

麻美子は、2人に感嘆の声をあげていた。

「いつもだと、えっちらおっちらウインチを回してセイルを上げないとならないのに、男の人が大勢いてくれると全部上げてくれてしまうから楽でいいわ」

「そうかい。セイル上げるぐらいなら、いつでも上げますよ」

「ラッコの短いマストのセイル上げるぐらいならお安い御用ですよ」

2人は、麻美子に答えていた。

「本当、めちゃめちゃ楽だわ、毎週ラッコに乗ってほしいぐらい」

そう呟いた麻美子だったが、この冬、春が訪れて暖かくなってくるまでの時期は、ずっと横浜のマリーナのヨットオーナーさんたちがラッコにかわるがわる乗りに来てくれることになるとは、この時はまだ夢にも思っていなかった。


作家プロフィール

主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など

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