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クルージングヨット教室物語127

Photo by yuya kitada on Unsplash

「ね、ちょっと」

麻美子は、隆の袖を引っ張って、テーブルから少し離れたところに連れていった。

「まだ、パーティーが始まるまで20分ぐらいあるでしょう」

「うん」

「ちょっとだけ、ホテルの中を見てこない」

麻美子は、隆に提案した。

「20分ぐらいだから、もう始まるよ」

「少しぐらい始まっても良いじゃない」

「香代と一緒に行ってくれば」

「香代ちゃんだって最初から参加したいでしょう。良いじゃない、行こう!」

麻美子は、隆を強引に会場から連れ出した。隆は、麻美子に手を引かれ、連れ出されながらブツブツと文句を言っていた。

「あれ、隆さんは?」

いつの間にか、自分の横にいたはずの隆がいないので陽子が言った。

「隆さんは、麻美ちゃんとデート」

「そうなの?」

「麻美ちゃん、ホテルニューグランド来るの初めてだから、中を見てみたいんですって」

「そういえば、麻美ちゃん楽しみにしていたものね」

陽子は、香代に答えた。

20分前には、まだ閑散としていた会場だったが、5分ぐらい前になって、急に人がいっぱいやって来て、会場の受付には、たくさんの人が受付待ちの行列になっていた。

横浜のマリーナの受付担当の職員は、忙しそうだった。

「定刻になりましたが、まだ少し受付の方で入場できていない方たちがいますので、今しばらく始まるのをお待ちください」

会場前方のステージ上で、マイクを持っている司会担当が、既に会場に来ている皆に伝えていた。

「オーナーさん、いなくなっちゃったの?」

市毛さんが、隆のいないことに気づいて、ラッコの皆に聞いた。

「なんか、麻美ちゃんがニューグランドの中を見て来たいって言うので、一緒に行ってしまった」

「あ、そうなんだ。きっとモールに行ったんだろうな」

「モール?」

「ニューグランドの中に、小さいけどお店の並んだショッピングモールがあるんだよ」

「そうなんですか」

「老舗の高級ブランドのお店も出ていて、ここ来ると行きたがる人多いんだよね」

「へえ、後で終わったら、私も行ってみようかな」

市毛さんの話を聞いて、陽子が言った。

「終わってからだと、お店閉まってしまっているよ」

「そうか」

「だから、始まる前に、モールを見に行って来た人たちが、開始間際になって入り口に並んでるだろう」

市毛さんは、入り口の行列をチラ見しながら、陽子に説明した。

「そういうことなんだ」

「それで、皆、開始間際にやって来たのね」


作家プロフィール

主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など

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