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クルージングヨット教室物語118

Photo by SUI SOU on Unsplash

「ね、横浜のマリーナから手紙が来ているんだけど・・」

麻美子は、夕食の洗い物を終えて、リビングに戻ってくると、そこで両親と休んでいた隆に声をかけた。

「何の手紙が来ているの?」

「クリスマスパーティーの招待状だって」

麻美子は、手紙の内容を隆に伝えた。

「ああ、忘年会か」

「忘年会じゃないって、クリスマスパーティーだって」

「名称はクリスマスパーティーなんだけど、皆は忘年会って呼んでる人の方が多い」

隆は、麻美子に答えた。

「どうするの、隆は参加するの?参加費がけっこう高いけど」

「会場がマリーナじゃないからね。ホテルの宴会場を借り切ってやるからね」

「そうなんだ。会場のホテルって、横浜のマリーナからけっこう近いところ?」

「ホテルニューグランド」

隆は、麻美子に答えた。

「え、ニューグランド?あの山下公園の前に建っているホテルのこと」

「そうだよ」

「あそこでやるんだ。私、行ってみたいな」

「行けば良いじゃん」

隆は、麻美子に答えた。

「行ってもいいの?」

「どうぞ」

「隆は行かないの?」

「麻美子が行くのなら、別に一緒に行ってもいいよ」

隆は、答えた。

「うちの他の子たちも行くかな?」

「うちの他の子って?」

「生徒たち、じゃなくてクルーの子たち」

麻美子は、一瞬ラッコのメンバーのことを生徒と呼んでしまって、慌ててクルーと言い直していた。卒業式をやった保田のクルージングから戻って来て、もう2週間ぐらい過ぎていた。

「行くって言うかもしれないね」

「あ、でも、参加費が高すぎるか」

「そんなでも無いんじゃない、横浜の老舗ホテルの貸し切りパーティーだぜ」

「それはそうなんだけど」

確かに、会場を考えたら隆の言う通り妥当な値段かもしれなかったが。

「香代ちゃんとか、瑠璃ちゃんだと負担が大きくなちゃわないかな」

「じゃ、経費で落としちゃえば・・」

隆が、麻美子に言った。

「経費?」

麻美子は、隆に聞き返した。

「経費って、何の経費よ。香代ちゃんも瑠璃ちゃんも、うちの会社の社員じゃないんだけど。会社のお金をそんな使い方できないわよ」

会社の社長秘書兼経理担当の麻美子は、隆に反論した。

「会社の経費が難しければ、うちで出しちゃえば」

「え、いいの?」

「いや、やり繰りは、全部そっちに任せてるから、予算的にどうなのかはわからないけど、なんとかなるなら、うちで皆の分を出しちゃえば良いんじゃないの」

「香代ちゃんと瑠璃ちゃんだけ?」

麻美子は、2人分だけ出して、他の人のは出さなかったらかわいそうじゃないと思っていた。

「2人分出すなら、皆の分出しちゃっても同じじゃないの。クルーの分も皆、オーナー負担にしているヨットって他のところでも割と多いよ」

隆は、麻美子に答えた。

「そうなんだ」

麻美子は、しばらく考えてから、

「それじゃ、そうしようか」

隆に答えた。

「まずは、皆が参加できるか、参加したいかを聞かなくちゃね」


作家プロフィール

主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など


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