クルージングヨット教室物語109
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「そこのブイを越えた時間と保田に到着した時間を覚えておいてくださいね」
鈴野さんは、麻美子に言った。
「その掛かった時間の早かった艇に、保田までのレースが1位だったということで賞品が出ますから」
「え、保田までのレースするんだ」
隆は、鈴野さんの話を聞いて驚いていた。
「レースするんだったら、途中でベラシスマリーナとか寄り道できないですね」
「そうですね」
鈴野さんは、隆に頷いた。
「大丈夫よ、カレー屋さんに寄らなくても、お昼はサンドウィッチを持ってきているから」
麻美子が答えた。
「じゃ、出発時刻を記録しておくね」
瑠璃子が、自分のスマホのメモ帳に、スタート時刻を記録した。
「エンジンを止めないといけないの?」
ヘルムを取っている香代が、隆に聞いた。
「セイルが上がっているけど、エンジン止めたら、保田になかなか着けないだろう」
「あ、機帆走で大丈夫ですよ」
鈴野さんが、香代に言った。
結局、他のヨットとレースをしているというよりも、ただ普通に皆で千葉の保田を目指して、クルージングしているだけという航海だった。
「お昼にしましょうか」
観音崎を越える辺りで、麻美子が家からバスケットに入れて持ってきたサンドウィッチを出した。
「いつもの麻美ちゃんのサンドウィッチだけど、美味しい」
「また香織ちゃんの分、取っておいたほうがいいよね」
陽子が、麻美子に聞いた。
「今回は取っておかなくても大丈夫よ。アクエリアスには、アクエリアスの分のサンドウィッチとして、出航する前に渡してあるから」
「アクエリアスの分も作ってきたの?」
「うん」
「そんなたくさん作るの大変だったんじゃない」
「大丈夫よ。ラッコの分だけに、アクエリアスの分を追加するぐらい大して変わらないから」
麻美子は、陽子に答えた。
「このサンドウィッチ、美味しいですね」
「うちの実家、輸出入業やっているから、魚の缶詰はいくらでもあるの」
麻美子は、ツナサンドを美味しそうに食べる鈴野さんに答えた。
「香代、お昼を食べ終わったら、垂直に本船航路を渡ろうか」
隆は、香代に指示した。
「渡った先に、もう見えているだろう、保田」
「え、どれ?」
「あれが、保田なの?あそこだったら前に、館山に行った時に、意識していなかったけど、私たち保田のすぐ目の前を通過していたってこと」
「そうだね」
隆は、瑠璃子に答えた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など