クルージングヨット教室物語63
Photo by Kano Takahashi on Unsplash
「ちょっと植物園も見ていく?」
昼食後、麻美子が皆に聞いた。
「見ていく」
皆の返事に、麻美子はお財布を持って入場券売り場に行くと、皆の分のチケットを購入した。
「はい、チケット」
麻美子は、皆に買って来たチケットを手渡した。
「チケットも良いけど、お母さんの椿オイルは買ったの?」
「まだだけど・・」
麻美子は、隆に答えた。
「大島の椿オイルなんて、うちのお母さんに勿体なくない?」
「たまにだからさ」
「じゃ、植物園を見て戻って来たら買っておくね。でも、大島の椿オイルがお母さん気に入って、毎回無くなる度に請求されても知らないよ」
「それなら、それで毎回無くなる度に買ってやるさ」
隆は、いつも夕食を作ってくれる麻美子のお母さんの顔を思い浮かべながら答えた。
「きれいだね」
麻美子は、植物園の園内を皆と巡りながら、うっとりしていた。残念ながら、シーズン外で椿の花はあまり咲いていなかったのだが、他にもいろいろな花が植わっていた。
「けっこう広いんだね」
植物園の園内を歩きながら、隆は麻美子に言った。
「おっ、ここにもいるじゃん、ミーアキャット」
隆は、植物園内にもミーアキャットがいるのを見つけた。
「かわいいね」
「ここのミーアキャットには、食事を上げられないんだね」
海の日に行ったリス村では、リスにあげたひまわりの種の余った分をミーアキャットにもあげられたが、ここでは見物客ではなく飼育員さんが餌をあげているのを羨ましそうに見ていた香代だった。
「どれにする?この一番大きいボトルで良いかな」
園内を見終わって、また入り口のお土産屋に戻ってくると、そこに売っている椿オイルの中で一番大きいボトルを手に取って、隆に見せた。
「なんでも良いよ」
隆が麻美子に答えたので、麻美子は一番大きいボトルを購入した。
「本当知らないからね。お母さんが椿オイルを気に入って、無くなる度に隆さん隆さんってせがまれても」
麻美子は、隆に言いながら、レジで椿オイルのお金を払っていた。
「帰りのバスが来たよ!」
大島、岡田港に戻るバスが植物園前に停車した。
ラッコとアクエリアスの皆がバスに乗ると、バスは岡田港を目指して発車した。
「あ、ドリーム号が入港しているじゃん」
岡田港に戻ってくると、自分たちの停泊している岸壁の後ろに、同じ横浜のマリーナに保管しているドリーム号が停泊しているのを見つけた。
「デカいな」
隆は、ラッコやアクエリアスに比べると、遥かに大きい船体のドリーム号に感嘆としていた。
ドリーム号は、全長45フィートもある横浜のマリーナに保管しているヨットでは、大きい方の部類のヨットだった。青い三本線のラインが入った船体に、フラッシュデッキが眩しかった。
「今夜は、賑やかになるぞ」
隆は、ドリーム号と大島で合流したことを喜んでいた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など