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クルージングヨット教室物語59

Photo by Amo fifty on Unsplash

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「島内観光ってどこに行くの?」

「わからん、麻美子の聞いてくれ」

タクシーの中で、隆と陽子は話していた。

後ろの座席に座っている3人には、どこへ行くのかわからないままに、タクシーは港、海ぎわから島の内部へと山道を上っていき、時鉈温泉に到着した。

「どこか、もっと面白いところに行くのかと思ったら、いきなり時鉈温泉なんだ」

隆は、タクシーを降りると温泉の入り口から中へ入りながら、麻美子に言った。

「私だって式根島なんてきたことないし、初めてなんだもの。そんなあっちこっち知らないわよ」

麻美子は、隆に答えた後で、

「それじゃね、バイバイ」

と男湯と女湯で別れているところで、隆に手を振った。

「なんだ、俺1人だけか」

「1人じゃ寂しいよね。私も、そっちに行こうか」

ちょっと寂しそうに隆が言っていたので、陽子が言った。

「こっちに来るか」

隆に言われて、陽子が男湯に入りそうな素振りをして見せていたので、麻美子が慌てて陽子の腕を女湯の方に引っ張っていた。

「陽子、男湯に入ってきても大丈夫だったよ」

隆が、お風呂に入ってきた後にエントランスに戻ってきて、そこで涼んでいた陽子に伝えた。

「そうなの、何で?」

「だって、男湯に人が誰も入っていなかったもの」

「そうなんだ」

陽子が答えた。

「へえ、隆以外に誰も入浴していなかったの?」

「誰もいない。1人で両手両足をめいっぱい伸ばして入浴してきたよ」

隆が自分の両腕を大きく伸ばしながら答えた。

「女湯は、けっこう混んでいたよね」

「麻美ちゃん、香代ちゃんがサバ焼き定食を食べたいってさ」

「本当、美味しそうな定食ね」

瑠璃子が、香代と奥にあった食堂のメニューを見てきた感想を伝えた。そこの食堂のメニューは、エントランスのソファにもチラシが置いてあったので、それを眺めた麻美子が言った。

「夕食、ここで食べていってしまおうか」

「雪ちゃんも一緒に来ていたら、ここで食べていちゃっても良いのだけどね」

隆が言ったが、麻美子に止められた。

帰りは、表の道路に出るまで、のんびりブラブラと歩いてから、またタクシーを拾って戻って来た。漁港に到着する少し前でタクシーから降りると、魚屋さんでお買い物をしてラッコに戻った。

「雪、もしかして酔ってる?」

隆は、メインサロンで頬を少し赤くしてビールを飲んでいた雪に聞いた。パイロットハウスで宴会をしていたアクエリアスのメンバーたちも、既に結構飲んで出来上がっていた。

「飲み組は、夕食でなくてもお酒とつまみで何とかなりそうね」

麻美子は、温泉組を中心に夕食の準備をした。

「え、サバ焼き!」

香代は、今日の夕食を見て、叫んだ。

「そう、温泉でサバ焼き定食を食べたいって話していたでしょう」

麻美子は、香代が言っていた言葉を覚えていて、今夜の夕食はサバ焼きにしたのだった。

「明日は、懐かしの大島に行って、その後に横浜に帰るんだよね」

「あーあ、横浜に帰りたくないな」

「もっと、あっちこっちクルージングしていたいよね」

陽子と瑠璃子が話していた。

「これから八丈島とか行くか?」

「八丈島より隆さんが行きたがっていた御蔵島に行こうよ」

「そうするか、御蔵に行くか」

隆は、陽子に賛成した。

「陽子ちゃんって、週明けから会社に行かなくても大丈夫なの?」

「会社はあるけど」

「それじゃ、御蔵なんて行けないじゃないの」

麻美子は、陽子に言った。

「行きたいなって話をしていただけだよ」

隆が、麻美子に言った。

「隆の言い方は、話だけじゃなくて、本当に会社サボりそうにしか聞こえないけど」

麻美子の言葉に、隆は苦笑するしかなかった。

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