会社の中で、
「あの人は優秀だから、独立してもやっていけそう。」
と言われる人がいます。
仕事が早い。
判断できる。
周囲から頼られている。
トラブルにも強い。
いろいろな仕事を任されている。
たしかに、こういう人を見ると、
「独立しても困らなそう。」
と思います。
私自身も、独立する前はどこかでそう思っていたところがあります。
でも実際に独立してみると、
会社の中で仕事ができることと、独立して仕事をつくることは、まったく別の能力でした。
そして私は今も、
「私は、いったい何屋なんだろう。」
と考えることがあります。
会社の中では、仕事が向こうからやってくる
会社や組織の中にいると、すでに役割があります。
会社の名前がある。
商品がある。
顧客がいる。
仕事の流れがある。
そして、
「これお願いします。」
と仕事がやってきます。
自分の担当ではないことでも、
「これ分かる?」
「これできる?」
と声をかけられることがあります。
そこで対応できることが増えていくと、
「あの人に聞けば分かる。」
「とりあえずお願いしてみよう。」
という状態になります。
私もこれまで、
事務局、秘書、経理、顧客管理、イベント運営、進行管理など、いろいろな仕事をしてきました。
必要なら資料をつくる。
管理表をつくる。
日程を調整する。
情報を整理する。
止まっている仕事があれば確認する。
人が足りなければ、その場に入る。
組織の中では、
「いろいろできる人」は便利です。
ところが独立すると、この「いろいろできる」が急に説明しづらくなりました。
「何でもできます」は、意外と仕事にならない
独立すると、
「何のお仕事をされているんですか?」
と聞かれます。
これが、なかなか難しい。
事務代行なのか。
秘書なのか。
業務改善なのか。
バックオフィスなのか。
イベント運営なのか。
動画制作なのか。
どれもやってきました。
だから、
「だいたいできます。」
と言おうと思えば言えます。
でも、
「何でもできます」は、頼む側からすると「何を頼めばいいのか分からない」でもあります。
会社の中なら、相手は普段の私を知っています。
「あれをやっていたから、これも頼めそう。」
と想像できます。
でも、外にいる人は私の仕事を知りません。
「事務もできます。秘書もできます。業務整理もできます。動画も作れます。」
と言われても、
「すごいですね。」
で終わってしまう。
何を頼めばいいのか。
どんなときに声をかければいいのか。
いくらくらいなのか。
そこが分からなければ、依頼にはつながりません。
できることが多ければ、仕事が増えるわけではない。
これは独立してから実感したことのひとつです。
「需要がないのかな」と思うこともある
会社の中にいた頃は、仕事が次々にありました。
ところが独立すると、同じようには仕事が来ません。
すると、
「私がやってきたことって、実は需要がないのかな。」
と思うことがあります。
でも最近は、
能力そのものに需要がないというより、
自分の能力と、相手の困りごとを、まだうまくつなげられていない
のではないかと思っています。
私は、現場を見れば問題を見つけることができます。
仕事がどこで止まっているのか。
情報がどこに散らばっているのか。
誰に仕事が集中しているのか。
役割のどこが曖昧なのか。
それを見て、
「ここをこう整理しましょう。」
と考えることはできます。
でも独立すると、その前に、
「私は、こういう問題を解決できる人です。」
と伝えなければなりません。
問題を見てから解決するのは得意なのに、
問題を見る前に、自分が何を解決できる人なのか説明する。
これが意外と難しいのです。
「忙しそうだから」と遠慮されることもある
もうひとつ、最近感じていることがあります。
いろいろな仕事をしている様子を発信していると、
「忙しそう。」
と思われることです。
実際、
「忙しそうだから声をかけづらかった。」
と言われることもあります。
これは少し盲点でした。
仕事をしていることを知ってもらうために発信する。
いろいろなことができると伝える。
すると今度は、
「この人、忙しそうだから頼めない。」
となることがある。
なかなか難しい(笑)。
「何でもできる」から、何を頼めばいいか分からない。
「いろいろやっている」から、忙しそうで声をかけづらい。
結果として、
仕事ができそうなのに、仕事を頼みにくい人
が完成します。
これは独立して仕事をするうえでは、あまりよろしくありません。
今も「私は何屋なんだろう」と考えている
私は今、
「構造設計プロデューサー」
と名乗っています。
これまでやってきた仕事を振り返ったとき、
一見バラバラだった仕事に共通点があることに気づいたからです。
情報を整理する。
役割を整理する。
仕事の流れを整理する。
止まっている場所を見つける。
誰か一人に集中している仕事を分散する。
人が頑張り続けなくても回る状態をつくる。
私はずっと、
「仕組みをつくる仕事」をしていたのだと思います。
ただ、それが分かったからといって、翌日から仕事が殺到するわけではありません(笑)。
今度は、
「構造設計プロデューサーに、具体的に何を頼めるのか。」
を分かる形にする必要があります。
サービスにする。
価格を決める。
事例を見せる。
記事を書く。
入口をつくる。
これは現在進行形で試行錯誤しています。
他社の仕事の構造は見えるのに、
自分の仕事を商品として構造化するのは、なかなか難しいものです。
仕事ができることと、仕事をつくることは違う
独立してから、
「仕事ができれば、仕事は来る。」
わけではないことを知りました。
仕事ができる。
仕事を取る。
商品にする。
価格を決める。
知ってもらう。
頼みやすい状態をつくる。
そして、実際に提供する。
全部、違う仕事です。
会社にいた頃は、
自分自身を商品にする必要はありませんでした。
会社という構造の中に役割があり、その役割に仕事が来ていたからです。
独立すると、
自分で自分の役割を設計し、その役割を相手に理解してもらう必要があります。
これは、会社員として仕事ができたからといって、最初からできるものではありません。
優秀なら独立すべき、でもない
だから私は、
「優秀な人なら独立した方がいい。」
とも思いません。
会社という仕組みの中で、専門性を発揮する方が合う人もいます。
自分で仕事をつくる方が合う人もいます。
少人数のチームが合う人もいる。
一人で淡々と仕事をする方が力を発揮できる人もいる。
独立は、優秀な人の上位職ではありません。
働く構造が違うだけです。
そして必要になる能力も違います。
私自身、独立してから、
「何ができるか。」
だけではなく、
「何を頼んでもらうのか。」
を考えるようになりました。
まだ答えが全部出たわけではありません。
「私は何屋なんだろう。」
と考えながら、サービスをつくり、発信し、試している途中です。
でも、それも含めて、
自分に合った仕事の構造をつくっているのだと思います。
優秀かどうかではなく、
自分は、どんな環境なら力を発揮できるのか。
そして独立するなら、
その力を、どうすれば相手が「頼める仕事」にできるのか。
会社の構造を離れて初めて、自分自身の仕事の構造を設計する。
独立とは、案外そういうことなのかもしれません。