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たとえ能力が劣っていても

学生時代初めての研究集会にて、自身の講演テーマを模索しておりました。
というのも研究集会は若手の集まりでしたが、当時修士1年であった私はキャリア・実力共に最も劣る立場にあり、真っ向から挑めば大した価値を提供できないだろうと睨んでいたからです。
自身の限られた引き出しの中で講演のテーマを悩む中、ある数学的対象の具体的な計算ができることに気づきました。
一般に数学において具体的な計算例は抽象的な理論を理解するのに大変重宝します。
一方で、理論が抽象的に論じるが故に計算に必要な情報が捨てられ、個別に計算する必要が多いです。
自身が気づいた計算は決して難しくはないのですが、具体例を大事にする文化から興味を惹くのではないか考え、この気づきを可能な限りシンプルな計算にまとめました。
この計算を講演した結果、集会の参加者に大変喜ばれ、助教授のある先輩に「修士の中で一番良い講演でだった。話題のチョイスが特によかった。」と褒めていただきました。
この自身の能力がたとえ周りに劣っていても、現状を把握し、情報を集め、周りの課題、需要を把握し、価値を提供できたという成功体験は現在の自分の財産になっていると感じております。