ASD女性への治療と対応法について
2022年6月、『僕の大好きな妻!』と言う女性の発達障害をテーマにしたドラマが放映され、女性の発達障害への認知度がまた少し深まりました。しかし、このドラマでの女性の特性は、「忘れっぽい」、「ものをよくなくす」、「計算ができない」など、どちらかと言うとADHDや学習障害などの、理解されやすい発達障害であったように思えました。しかし、発達障害にはもうひとつ「ASD」と言う種類があることをご存じでしょうか? 実は、女性のASDは男性のASDに比べても25%程度しかおらず、非常に珍しいとされています。この理由についてまだ解明されていませんが、ASDの発症の原因に脳内の男性ホルモンが関わっているのではないかという説や、胎児期の胎内の男性ホルモンの量が脳発達に影響しているのではないかという説、また、女性ホルモンがASD症状を緩和しているためではないかと所説あります。
ASDと言うのはADHDのように目立ったミスが無い為、性格と同一視されがちなのですが、大まかに言うと、「取捨選択ができない」「工夫が出来ない」といった症状だと言えます。その結果、アイデンティティが育たない、依存、境界性パーソナリティ障害などの二次障害へ繋がる危険性があります。
女性のASDの問題としてよく取り上げられるのが、「男性への自衛が出来ない」と言う事です。アイデンティティが育たず、言葉の裏も読めず、依存的になりやすいため、男性に搾取される事が多いと言われています。その結果、PTSDや男性恐怖症を発症するASD女性も少なくありません。勿論、いじめや虐待、差別にも遭いやすく、対人恐怖症、社交不安障害を起こしやすいと言えるでしょう。
では、そういった二次障害を防ぐ方法として、どのような方法があるでしょうか。ひとつはASD女性が男性に対してより一層危険意識を持つ事ですが、これは当事者に精神的負荷を強いる事になりますし、難しいと言えます。では、男性から隔離して生活させるのはどうかと言うと、それは有効な手段であると思われます。特に、定型女性とも隔離し、ASD女性のみでコミュニティを形成することは、ASD女性にとって安心できる人生となるでしょう。
もう一つ有効であると考えられるのは、男性化治療を行う事です。ASDは男性に多い障害である事や、その孤立性から、自己の女性性について疑問を持つ当事者も少なくなく、また、ASDと男性ホルモンに関係がある事から、ASD女性の脳は男性的であると考えられており、実際にASD患者がトランスジェンダーを併発している割合は、一般の割合よりも7%高いと言う統計が出ています。つまり、ASD女性の治療として男性化を行うことは、本人のQOLの向上に繋がり、二次障害を防止できる有効な手段であると考えられます。
美しいものが好きとか、情緒豊かであるとか、一般に「女性特有」の特徴と考えられている性質を男性が持つ事に対しては、世間は受容できてきていると考えられます。しかしそれらの感情を理解できない、社会性に乏しいASD女性に対してはまだまだ男性側からも女性側からも差別が根強く、居場所が無いと感じているASD女性は多いでしょう。女性のASDは少ないとされていますが、実は診断されていないだけで本当はもっと多いのではないかという研究もあります。PTSDや差別で苦しんでいる女性に対し、発達障害の診断を行う事もまた急務であると言えるでしょう。