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パニック障害と就職

Photo by Simran Sood on Unsplash

 私はパニック障害という病気の闘病生活を彼是2年以上続けている。

 パニック障害は所謂精神疾患の一種。うつ病などと言った心の病気に分類される。
 パニック障害とはパニック発作と呼ばれるものが繰り返されるというもの。
 パニック発作が起こると突然強いストレスを感じる。そして動悸、息切れ、目眩といった自律神経症状と強烈な不安感に襲われる。その苦しさは「死んでしまうのではないか」と思う人も少なくないほどだ。

 パニック発作自体はよく見られる症状であり、アメリカ合衆国の製薬会社MSDが公開しているMSD Manualによれば1年で成人の約11%が経験するとされている。
 つまり、数字の上では大人の10人に1人はパニック発作を経験しているわけだ。そういう意味では実は身近な病気なのだが、残念ながら日本の社会では正しい認識があまり浸透していない。

 私の場合、初めて起こったのはバスの中だった。バスに乗り遅れそうになった私は走って乗り込み、バスが出発した直後に発作が起こった。漠然とした不安感(胸が締め付けられるような感覚)と息苦しさ。視界がチカチカとしたが、そんなことより息苦しさが辛かった。
 その後、母親に相談するも「気のせい」と言われて発作に耐えながらバスと電車で通学する日々が少し続く。しかしある日、発作の恐怖から電車に乗れなくなった。直ぐにバスも乗れなくなった。そうなっても尚、「気持ちの持ちよう」「耐えて」と言われたのは絶望の一言に尽きる。

 そして、パニック障害の治療を開始したときの私は発作が慢性的なものになり起き上がることすら辛い状態になっていた。当時、新型コロナウイルス感染症の流行からリモート授業になっており、課題を提出することで出席扱いになっていたが、平時なら間違いなく休学するような状態。コロナのストレスが追い風になったのもあるが、そのコロナに救われた側面もあるので複雑な気持ちだ。


 高専5年生、最終学年の時に私は専攻科を受験し不合格。コロナとパニック障害のダブルパンチでTOEICが受けられず学校で受けたScore 330という恥ずかしい点数が足を引っ張った。元々英語は超が付く苦手科目ということもあるだろうが……
 進学したいが通える大学がない(近郊の大学もキャンパスが遠い)、泣く泣く就職に切り替えたわけだがそこでも壁にぶつかる。
 コロナ禍で面接は自宅から受けられる。しかし、自宅から半径10kmくらいの行動範囲にある企業なんてそう多くない。条件面や仕事の内容に拘ってられないのだ。インターネットを通してリモートでも働ける企業を探すも高専卒の条件は少ない。何とか企業を探し出し応募してもお祈りメールが届くことを繰り返し、卒業後1年間治療してより就職出来そうな企業を増やすことになった。ここで私は新卒という就活切り札を失った。


 このパニック障害、青年期の終わり頃から成人期初期に発症する人が多い。ちょうど大学生くらいの年代と言えばいいだろう。そして、この病気の治療は早くても1年と年単位で長い時間が必要だ。
 私のように就職活動の時期にパニック障害などの不安障害の治療を行っている人は少なくない。症状や発作の起こりやすい場所などによっても変わってくるが、周囲の理解や助けが大切だ。
 そして、このような精神的な病気はストレスを減らすことが重要になる。ストレスは人間関係や将来への不安だけでなく、転居などの環境の変化など実感しないものの発生するものも多い。

 日本はストレス社会だ。自殺者がこれほど多い先進国は他にない。
 そのストレス社会で増えてしまううつ病や不安障害といった精神的な病気。そう言った病気を抱える人への理解が進み、働きたくても働けないという人が減ることを願うばかりだ。

〇参考にさせて頂いた記事

パニック発作とパニック症(MSD マニュアル家庭版 John W. Barnhill)