「やりがい」は「やりたい」を叶えた先にある?
「やりがい」は、
「やりたい」を叶えた先にあるもの。
コピーライターとして働く前の私は、
なんとなくそう思っていました。
しかし、実際はそうではなかった。
私がやりがいを感じる瞬間は、
また別のところにあったのです。
自分のアイデアを形にしたい。
というのが、
私の人生における大きなモチベーションでした。
それは今も基本的には変わっていません。
小さい頃から絵を描くのも、本や漫画を読むのも好き。
何かしらの作品をつくる側になれたらいいな、
そんな思いを胸に抱いていました。
その後、
思いの芯の部分は変わらないまま、
デザインや広告など、
興味の範囲は少しずつ広がっていきます。
自分の考えたアイデアや表現が、
世に出るような仕事がやりたい。
そうした志を持ち、デザイン専門学校を卒業後、
広告制作会社にコピーライターとして入社。
それから2026年3月末までの5年間、
食品、アパレル、不動産、銀行など…
様々な業種のクライアント、
そして多様な媒体の広告制作に携わることができました。
企画から関わったTVCMが、お茶の間で流れたり。
考えたラジオCMが、誰かの耳に届いたり。
書いたコピーが、新聞の一面に掲載されたり。
プレゼンを獲得し実施に至ったイベントを、
たくさんの人が楽しんでくれたり。
ともに制作に携わった多くの方々のおかげで、
「自分のアイデアや表現が世に出る」という願いは
いろいろな形で叶えることができました。
でも、今振り返ってみて思うこと。
私がやりがいを感じたのは、
アイデアが形になり世に出たときよりも、
「クライアントと心が通じた瞬間」
だったかもしれない。
コピーライターというと、
一人で黙々と企画を考え、文章を書く。
そうしたイメージを持たれるかもしれませんが、
私自身はクライアントの元へ出向き、
直接やりとりする機会も多くありました。
考えた企画や制作物を提案する。
フィードバックをいただく。
「ここが気になる」
「こういう要素も入れたい」
一発OK、なんてことはほとんどありません。
そうしたとき、
言われた通りに修正するのももちろん大事。
けれど私は
「制作目線で考えた、より良い案を提案できないか」
ということを心がけるようにしていました。
フィードバックの意図を探る。
その上で必要であれば、
自ら文章を調整したり、デザイナーに相談したりして、
制作目線でより良いと思う案(別案)をつくる。
提案の際は、別案を考えた理由もきちんと説明する。
当たり前のことかもしれないけれど、
「制作のプロとして対等に、クライアントと向き合いたい」
という気持ちがありました。
結果、言われた通りの修正案が決定になることも、
準備した別案への反応が微妙なときもあります。
非効率だ、と思う人もいるかもしれません。
でも、制作目線で考えた別の方向性を提示することで、
また違った角度から先方の考えを引き出せることもあります。
どんな広告を作りたいか、
どんなことを伝えたいかなどへの理解がさらに深まり、
意思疎通もスムーズになっていく。
何より、トライと意見交換を重ねたぶんだけ、
クライアントとの間に信頼関係が育まれていったように感じます。
「こちらの言いたいことが通じてきたと思っていたのに…」
退職について報告した際、
あるクライアントから漏れた、思いがけない言葉。
素直に「やってきてよかった」と思えた瞬間でした。
自分のアイデアが形になったこと以上に、
一緒に広告をつくる相手として
対等に信頼してもらえている感覚が嬉しかった。
その言葉は、私の自信のひとつとなって、今も心の中に残っています。
アイデアを形にしたいという願い。
それは引き続き動力源として、大切にしながら。
次はもっと近い距離で、
「誰かに向き合い、一緒につくるような仕事」ができたら。
今の私はそんなふうに考えています。