【COO/CHRO代行のリアル③】なぜ、地方企業ほど「採用の仕組み化」が効くのか?
【サマリー】
「東京には勝てない」と諦めていた宮城県の食品製造会社。しかし、地方企業ならではの武器を言語化し、新卒採用と定着を仕組み化。3年で新卒8名採用、離職率50%→25%、売上1.8倍を実現。地方企業が「逆転」できる理由を公開。
【この記事で分かること】
・地方企業が抱える3つの壁と3つの武器
・なぜ地方企業の方が「採用しやすい」のか(逆説)
・新卒が「東京に行きたい」と辞める理由と対策
・離職率50%→25%を実現した定着の仕組み
【こんな経営者におすすめ】
・地方で事業を営む中小企業(従業員10〜50名)
・「東京の企業には勝てない」と諦めている
・新卒を採用してもすぐに辞めてしまう
・採用の仕組み化を「知っている」が「やり切れていない」
【本文】
「東京の企業には勝てない」
「給与も、知名度も、勝てない」
「優秀な若者は、みんな東京に行ってしまう」
「このままでは、会社を畳むしかない」
宮城県で食品製造会社を経営する社長(60代)が、こう漏らした。
創業50年、従業員20名。地元では知られた老舗企業だ。
でも、新卒採用に苦戦していた。
採用しても、1年で辞める。
「やっぱり東京に行きたい」
新卒社員のその一言に、社長は諦めかけていた。
地方企業が抱える「3つの壁」
地方企業の新卒採用には、3つの壁がある。
①知名度の壁 – 求人を出しても、応募が来ない
②給与の壁 – 大手企業に、給与で勝てない
③若者流出の壁 – 地元の優秀な若者は、東京へ
多くの地方企業が、この壁を前に諦めている。
でも、私がCHRO代行として最初に社長に伝えたのは、こうだ。
「地方企業には、東京の企業にはない武器があります」
社長は、キョトンとした顔をした。
「武器? うちに?」
地方企業の「3つの武器」
そう、ある。
①社長との距離が近い
東京の大企業では、社長の顔すら見えない。地方企業なら、社長と直接話せる。経営を間近で学べる。
②裁量権が大きい
東京の大企業では、若手は「歯車」。地方企業なら、入社1年目から大きな仕事を任される。
③地元への貢献実感
「地元に貢献したい」という想いを持つ若者は、必ずいる。東京の企業では味わえない、やりがい。
この武器を、言語化できていないだけだった。
地方企業の「逆説」──実は、採用しやすい
ここで、重要な「逆説」を伝えたい。
「東京に勝てない」は間違いだ。
実は、地方企業の方が「採用しやすい」。
なぜか?
東京の大企業は、採用競争が激しすぎる。毎日、何十社もの企業が求人を出している。
一方、地方企業は、競合が少ない。
仕組みを作れば、すぐに差別化できる。
「採用の仕組み化」をしている地方企業は、まだ少ない。だから、やれば勝てる。
これが、地方企業の「逆説」だ。
社長の葛藤──「うちには無理です」
社長は、最初、こう言った。
「採用の仕組み化?
そんなの、大企業の話でしょ。
うちみたいな小さな会社には無理です」
私は、こう答えた。
「大企業だからできるのではない。
仕組みがあるから、大企業になったんです」
社長は、ハッとした顔をした。
そこから、一緒に仕組みを作り始めた。
採用の仕組み化──第1回の復習
採用ファネルの詳細は第1回で語った。
・認知:地元の若者に会社を知ってもらう
・応募:「ここで働きたい」と思わせる
・選考:見極めの精度を上げる
・入社:内定辞退を防ぐ
・定着:入社後、活躍し続ける
この企業も同じプロセスを踏んだ。
特に効果があったのが、社長自らが語る採用動画だった。
「地元で働く意義とは?」
社長の想いを2分間の動画にまとめ、SNSで発信した。
「こんな会社が地元にあったんだ」
地元の若者から、そんな声が届くようになった。
でも、採用だけでは足りない──「定着の壁」
採用の仕組み化で、新卒が採用できるようになった。
でも、1年で辞める。
「やっぱり東京に行きたい」
新卒社員のその一言に、社長は頭を抱えた。
採用しても、定着しなければ意味がない。
なぜ、新卒は「東京に行きたい」と辞めるのか?
理由は3つある。
①将来が見えない
「この会社で働いて、将来どうなれるのか?」が見えない。
②孤独感
入社後、誰もサポートしてくれない。不安を相談できる相手がいない。
③東京への憧れ
SNSで東京の友人の華やかな生活を見て、焦る。
この3つを解消しなければ、新卒は定着しない。
定着の仕組み化──3つの打ち手
打ち手①:キャリアパスの明示
「この会社で働いて、将来どうなれるのか?」
この不安を解消するため、キャリアパスを明示した。
・入社1年目:現場で技術を学ぶ
・入社3年目:リーダーとして若手を育てる
・入社5年目:工場長候補として経営を学ぶ
「地方でも、成長できる」
この確信が、定着に繋がった。
打ち手②:入社3ヶ月のオンボーディング
入社初日から3ヶ月間の「やることリスト」を作成。誰が・いつ・何をサポートするかを明確にした。
孤独感を解消する。
打ち手③:月1回の1on1制度
上司との月1回の1on1を制度化。小さな不安や悩みを、早期にキャッチする。
ある新卒社員の涙
入社3ヶ月の新卒社員が、1on1でこう言った。
「実は、辞めようと思ってました」
「何が不安だったの?」
彼は、涙を流した。
「地元に貢献したいんです。
でも、この会社で成長できるか不安で...
東京の友達が輝いて見えて...」
私は、キャリアパスを示した。5年後、工場長になれる道筋を。
彼は、残った。
今では、リーダーとして若手を育てている。
定着の仕組み化が、一人の人生を変えた。
「知っている」と「やり切る」は、違う
ここで、重要なことを伝えたい。
「採用ファネル?知ってるよ」
「オンボーディング?やってるよ」
多くの企業が、知っている。
でも、やり切っている企業は、ほとんどない。
「知っている」と「やっている」は、違う。
「やっている」と「やり切っている」は、もっと違う。
この企業は、「やり切った」。
・社長自らが語る採用動画を撮影
・入社3ヶ月のオンボーディングリストを作成
・月1回の1on1を全員に実施
当たり前のことを、当たり前にやり切る。
それが、逆転劇を生んだ。
結果:地方企業の逆転劇
3年後、この企業は:
・売上:1.8倍に成長
・従業員:20名→30名
・新卒採用:3年間で8名
・新卒3年離職率:50%→25%に改善
以前は新卒を4名採用しても、2名が辞めていた。
でも、定着の仕組み化により、8名採用して2名のみの離職(離職率25%)に改善。
そして、何より大きな変化は、
「東京には勝てない」と諦めていた社長が、「地方だからこそ、勝てる」と確信したこと。
地方企業の逆転劇だ。
地方企業が採用で勝つ「唯一の方法」
最後に、地方企業が採用で勝つ唯一の方法を伝えたい。
「東京の真似」をしてはいけない。
給与を上げる? → 東京の大企業には勝てない
知名度を上げる? → 広告費をかけられない
では、どうするか?
「社長の顔が見える」
「裁量権が大きい」
「地元に貢献できる」
この3つを、徹底的に言語化する。
そして、採用・育成・定着を仕組み化する。
当たり前のことを、やり切る。
これが、地方企業が勝つ唯一の方法だ。
採用→育成→定着の「三位一体」
第1回で、採用の仕組み化を語った。
第2回で、No.2の育成を語った。
今回、定着の仕組み化を語った。
採用→育成→定着
この3つが揃って、初めて組織は成長する。
採用だけでは足りない。育成だけでも足りない。定着がなければ、意味がない。
採用・育成・定着の三位一体。
これが、私がCOO/CHRO代行として提供する価値だ。
「東京には勝てない」は、思い込みだ。地方企業は、勝てる。
次回予告
第4回:COO代行が「CHRO」も兼ねる理由
なぜ、事業戦略(COO)と組織構築(CHRO)を分けてはいけないのか?